米国産牛肉が高度のダイオキシン汚染という韓国の発見 米国は懐疑的だが真相は?

農業情報研究所(WAPIC)

06.12.26

 わが国でも報道されているように、韓国農林部が骨片が発見されて返送された米国産牛肉から韓国内の許容値(5ピコグラム、1ピコグラムは1兆分の1グラム)を超えるダイオキシンが検出されたと発表した。

 米国産牛肉からダイオキシン、国内許容値を超過 聯合ニュース 06.12.22
 http://japanese.yna.co.kr/service/article_view.asp?News_id=022006122103600

 しかし、この発見は、米国農務省(USDA)当局者や米国牛肉産業のなかに、怒りとは言わないまでも、疑いを引き起こしているという。USDA報道官は、韓国検査官は6.26ピコグラムのダイオキシンを検出したと言っているが、この検査結果が正確であるとすれば、これは”非常に異例で、我々が米国牛肉のサンプルに発見しているダイオキシンのレベルとも一致しない”と言っている。USDAは、検査がどのように行われたのか、どのようなタイプのダイオキシンが発見されたのか、韓国当局者が情報を提供するように正式に要請するつもりだという。

 U.S. Officials Question S. Korea’s Dioxin Discovery,Cattle Network,12.25
  http://www.cattlenetwork.com/Content.asp?ContentID=93264

  ダイオキシンと呼ばれるもには毒性が比較的弱いものからサリンや青酸カリをはるかに上回る強い毒性を持つものまで様々な種類がある。韓国で発見されたダイオキシンがどのようなものなのか、米国のみならず、わが国の関心事ともならねばならない。わが国は韓国に情報を求めているのだろうか、あるいは米国産牛肉に残留するダイオキシンの検査を行っているのだろうか。

 これが杞憂ならば結構な話だが、気になるのは米国研究者も、韓国の発見は驚くべきことではないと言っていることだ。別の報道によると、USDAのバイオサイエンス研究試験所と食品安全検査局の科学者は米国産牛肉・牛乳に様々なレベルのダイオキシンを検出している。研究の暫定的結果は、肉牛のダイオキシン濃度には地理的位置が影響を与え、非去勢雄牛では他のと畜動物よりも高濃度になる可能性があることを示唆しているという。

 この研究によると、米国環境保護庁は、牛が、あらゆる燃焼過程から生じる粒子を含むダイオキシンの降下物に汚染された飼料を消費することで汚染されると考えている。国産牛肉全体のダイオキシン濃度に関して利用できる情報はほとんどないが、検査された個々の牛で高度の違いがあることは地理的位置と汚染の間に相関関係があることを示唆している。カンサス州立大学の食肉科学者・スコット・スミス氏は、家畜のダイオキシン汚染は、ダイオキシンが生産される工場に近い放牧場で高いように見えるという。

 South Korea Dioxin Find Not Surprising - Meat Scientists,Cattle Network,12.22
 http://www.cattlenetwork.com/Content.asp?ContentID=92902

 とすれば、韓国で発見されたような牛肉の高度ダイオキシン汚染があったとしても不思議ではない。

  USDA食品安全検査局の調査によると、2002-2003年に米国各地から集められれた139の雄子牛・未経産雌牛のサンプルに検出されたダイオキシン類全体の毒性等量(TEQ)で示された濃度(ppt=1兆分の1)は、平均=0.93、最低=0.21、最高=6.12(豚や鳥よりもずっと高い)となっている。韓国で発見された数字と直接比較することはできないが、これがあり得ない数字ではないことを示唆している。

 USDA/FSIS:Dioxins and Dioxin-Like Compounds In the U.S. Domestic Meat and Poultry Supply
 http://www.fsis.usda.gov/PDF/Dioxin_Report_0605.pdf