米国新農業法案 連邦食肉検査に終止符 検査官労組が安全基準引き下げに猛反対

農業情報研究所(WAPIC)

07.9.8

  米国の食肉検査官同盟、その他の団体が新農業法による食品安全基準に引き下げに猛反対している。

 PR NewsWiresが報じるところによると、次のとおりだ。

 New 'Farm Bill' Would Stop Federal Meat Inspection,PR NewsWires,9.7   

 食肉検査官同盟が属するアメリカ政府雇用者連盟(AFGE)が6日、連邦食肉検査を終わらせることになるであろう下院新農業法案に強い反対を表明した。最近下院を通過した法案は、食肉・鶏肉生産者が厳格な安全基準順守をやめ、もっと寛大な州のガイドラインを選ぶように奨励することで、食品安全基準を引き下げるものだ。

 連邦食肉検査法と鶏肉製品検査法を修正する条項は、数週間以内で議会で採択されねばならない法案に埋め込まれた。AFGEのジョン・ゲイジ委員長は、「ホウレンソウなど汚染製品や食品に脅かされているアメリカ人、米国で販売される食肉・鶏肉の安全基準引き下げの試みで、新法は事態を一層悪化させる」と言っている。

  法案は、さらに、州検査食肉の他州への移出 を禁止する現行制度も廃止する[禁止を続ければ増加する州検査肉が売り捌けなくなるからであろう]。これも安全性に重大な影響を及ぼす。特定の州で加工された製品の汚染が発見され、リコールされねばならなくたったとき、個々の州はリコール対象製品を他の州まで追跡する能力を持たないからだ。

 州の検査が連邦の検査に比べて工場衛生基準に寛大なことは、農務省検査官やメディアの数々の報告がはっきり述べている。例えば、昨年9月に出た農務省検査官の報告 によると、ミシシッピ州は、前日の食肉残滓でひどく汚染されたボードの上での切り分けなど、様々な安全問題を発見しながらも、そのまま操業を続けることを許している。

 どうしてこんな法案が通るのか。委員長は、「我々はこの法案が、公衆衛生を顧慮することのない州検査官による’寛大で’、’柔軟な’執行を求めている食肉生産者による激しいロビー活動の産物だと見ている。法案を支持する議員は、公衆の信頼を裏切る責任を問われねばならない」と言う。

 中国などには徹底した安全管理を要求しながら、国内に関してはこの有様だ。今まで、農務省の7,000人の検査官が個々の食肉・鶏肉処理工場に張りつき、ラインを通過する一体ごとに検査の目を光らせているから万全というのが米国[政府の]の自慢だった。それでも、猛烈なスピードで流れる屠体・肉の入念な検査などできるはずがない。今年1月から7月の間だけでも、病原細菌汚染による5件の食肉・肉製品リコールが起きている。工場畜産による細菌汚染まみれの糞尿が食肉を汚染、こんな検査で発見できるわけもないからだ。

 そんな検査がさらに杜撰なものになる。安全を脅かされるのは米国国民だけではない。日本も含めた世界中の輸入国国民だ。BSEにかかわる日本や韓国への輸出プログラムの実行なども、ますます杜撰さが目立つようになるだろう。中国ばかりに気を取られていると、大変なことになる。