中国最大手乳業会社の粉ミルクがメラミン汚染 乳児多数が腎臓結石 一人は死亡

農業情報研究所(WAPIC)

08.8.13

 ニュージーランド最大の乳業会社・フォンテラも資本提携(43%出資)する中国最大手の乳業グループ・三鹿の乳児用粉ミルクのメラミン汚染で、中国の何人ともしれぬ乳児が危険にさらされている。9月11日には、甘粛省で最初の死者も確認された。

 6月27日に甘粛省省都の蘭州の人民解放軍第一病院で一人の乳児の腎臓結石が報告された。以来同様のケースが、甘粛省をはじめ、寧夏回族自治区、i陝西省、江 蘇 省安徽省、湖南省でも報告されている。

 患者の数は把握できていないが、甘粛省の保健当局のスポークスマンは、省で今年今までに、59人の乳児が腎臓結石と診断されていいると言う。その多くは同じ三鹿ブランドのミルクを与えられていた。2006年も去年も、省では乳児の腎臓結石は一例も報告されていない。

 当然、三鹿のミルクに疑いがかかる。しかし、三鹿は当初、同社のミルクの安全性には何の問題もない、原因は三鹿ブランドを名乗る偽造品だと主張していた。しかし、11日になって、自社製品が”tripolycyanamide”汚染されたいるのを発見、今年8月6日以前に製造された乳児用粉ミルクの回収を決めたと発表した。

 China's Sanlu admits contamination of baby milk powder products,xinhua,9.11
 http://news.xinhuanet.com/english/2008-09/11/content_9932520.htm

 tripolycyanamideとは何なのだと思っていたのだが、翌日のチャイナ・デーリー紙が、三鹿は内部調査の後、「メラミンと呼ばれる化学物質」に汚染されていたと発表したと報じた。これで納得がいった。

 Sanlu recalls milk powder as baby dies,China Daily,9.12
 http://www.chinadaily.com.cn/china/2008-09/12/content_7020499.htm

 メラミンと言えば、去年、米国などに輸出された中国産ペットフードに含まれ、多数の犬猫の腎不全による死亡事件を引き起こした物質(有機窒素化合物)だ。メラミン自体に毒性はないが、尿中でシアヌル酸と反応して結晶を作り出したと考えられている。

 中国の匿名保健専門家によると、メラミンの外観は粉ミルクと似ており、織物、接着剤、家庭用品、難燃剤などの製造に広く使われているが、「食品のたんぱく質含有量を測る指標となる窒素のレベルを高く見せかける」ということだ。故意の混入を疑わせる。

 今や、保健、公安、農業、品質管理にかかわる省庁が組織した共同調査団が乳児患者の尿と腎臓結石を調査、メラミンの存在を発見した。三鹿は8260トンを市場から回収したが、700トンは未だ流通しているということだ。

 China's health ministry says tainted milk powder causes infants kidney stone,xinhua,9.12
 http://news.xinhuanet.com/english/2008-09/12/content_9957453.htm

 なお、フォンテラによると、ミルクのほとんどは中国国内で販売されているが、少量は台湾にも輸出されているということだ。

 Fonterra partner recalls baby formula over chemical,New Zealand Herald,9.12
  http://www.nzherald.co.nz/nz/news/article.cfm?c_id=1&objectid=10531877

  台湾当局も12日夜、問題の粉ミルクが輸入されていることを確認したという。

 Official confirms imports of milk powder from China,The Taipei Times,9.13
  http://www.taipeitimes.com/News/taiwan/archives/2008/09/13/2003423109

  それだけではなく、事件の波紋は世界中に広がる恐れがある。

 カナダ食品検査局(CFIA)は12日、消費者に向けて中国からの問題製品の購入を避けるようにと勧告した。当該製品のカナダでの販売は許されていないが、エスニック食品を扱う一部店舗で販売するするために、不法に輸入された可能性は排除できないと言う。

 Consumer Advisory - Infant formula originating from China,CFIA,9.12
  http://www.inspection.gc.ca/english/corpaffr/newcom/2008/20080912e.shtml