欧州食品安全機関 メラミン汚染食品 子供は耐容1日摂取量を超える場合も

農業情報研究所(WAPIC)

08.9.27

 欧州食品安全機関(EFSA)が、中国からEUに輸入された合成食品のあり得るメラミン汚染による人の健康リスクに関して欧州委員会が求めた緊急意見を9月25日付けで発表した。

 欧州委員会は、中国乳児の健康に非常に厳しい影響を与えた中国原産幼児用ミルクやその他の乳製品のEUへの輸入は禁止されているが、ビスケット、チョコレートなど、汚染粉乳から作られた可能性のある合成食品がEUに入っているかもしれないと、このような食品のメラミン汚染に関する人の健康リスクに関する科学的意見を求めた。

 EFSAは、汚染されたビスケットとチョコレートの消費を通してのメラミンへの暴露の健康影響を評価した 。評価の基準としては、メラミンの主要な健康影響と考えられる腎臓のダメージが現れるまでの時間に関する不確実性があることから、メラミン汚染製品を繰り返し食べることで起きるかもしれない比較的短期間のメラミンへの暴露のあり得る影響を考慮し、生涯にわたる暴露にも耐える体重1kg当たりの一日耐容摂取量(TDI):0.5 mg/kg を採用した。

 (一時的にでもこれを超えることがあれば、一生涯とはいわず、短期間の間に健康影響が現れ得るということである 。一時的にこれを超えても、生涯における平均一日摂取量がこれ以下なら大丈夫と保証されるわけではない。もしそうなら、不可避の環境汚染で人体に有害無用な化学物質の摂取を生涯にわたり続けねばならない場合を除き、回避可能で短期間に排除できるメラミン汚染のような事件の健康影響は、まったくあり得ないことになる 。生産者や加工業者の同様のごまかしを必然にする激しい低価格競争はなくならないだろうか、少なくともメラミンの大規模な故意混入は、当分は起きないだろう)

 その上で、利用可能なデータに基づき、粉乳を含むビスケットとチョコレートへの多くの理論的暴露シナリオを開発した。最悪のシナリオでは、中国の乳児用粉ミルクについて報告された最高レベルの汚染数値(約2500mg/kg)を使用した。

 これらのシナリオに基づくと、汚染粉乳を含むチョコレートとビスケットを消費しても、成人に関しては心配される健康影響はない。子供についても、このような粉乳で作られたビスケットやチョコレートの平均的な消費では、TDIを超えることはない。

 とはいえ、最悪のシナリオの場合、一日に平均以上の多量を食べる子供についてはTDIを超える。このようなビスケットとチョコレートの両方を食べる子供は、TDIを3倍以上超える可能性がある。

 ただし、EFSAは、このような高レベル暴露のシナリオがヨーロッパで起きるかどうか、今のところ分からないとしている。

 Statement of EFSA on risks for public health due to the presences of melamine in infant milk and other milk products in China,EFSA.9.25
 http://www.efsa.europa.eu/EFSA/efsa_locale-1178620753812_1211902098495.htm

 なお、欧州委員会は25日、EU各国に対して、ミルクを15%以上含むか、ミルク成分含有量が不明な中国からのすべての製品を、試験所での分析も含め、輸入段階でチェックするように要請した。試験所の分析は、メラミンのレベルが2.5mg/kgを超えるか超えないかを決める。これを超えるメラミンを含む製品は廃棄される。

 Update on melamine,FSA(UK),9.26
  http://www.food.gov.uk/news/newsarchive/2008/sep/melamine
  EU Bans Chinese Baby Food Containing Milk,DW,9.25
  http://www.dw-world.de/dw/article/0,2144,3670881,00.html,Deutsche Welle,9.25

 日本ではまともなリスク評価は未だない。リスク管理機関は、米国とEUが設定したTDIに基づき、EFSAが想定するような最悪のシナリオは考えることなく、今までに分った汚染レベルでは心配は要らないと繰り返すだけである。しかし、リスク管理とは、そもそも最悪のシナリオを想定すべきものではないのだろうか。そうでなければ、消費者の不安は拭えない。

 中国における牛乳へのメラミン混入事案への対応について(第3報) 厚生労働省 9.26
 http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/09/h0926-5.html