フェロー諸島 ゴンドウクジラはもう食べられない 水銀汚染で長期的健康影響

農業情報研究所(WAPIC)

08.11.29

 フェロー諸島の主席医務官が、島民が常食としてきたゴンドウクジラの肉や油は余りに多量の水銀を含み、もはや人間の消費には不適と考えられると勧告した。

 スコットランドとアイスランドの間に位置するデンマーク自治領のフェロー諸島は捕鯨の伝統を最後まで受け継いでいる国の一つ、毎年数千頭のゴンドウクジラを捕らえ、ほとんどすべてを島民が食べている。反捕鯨団体の抗議に対しては、日本やノルウェーと同様、捕鯨は島の文化に一つだと抗弁してきた。

 ところが悲しいかな、フェロー人に対する汚染物質の影響に関する研究が、水銀は、特に健康に対して長期にわたる悪影響を引き起こすことを明らかにした。

 この研究は、妊婦の血液中の水銀の量がWHOの安全限界以下の場合にさえ、その子供は学習、注意、記憶、その他のスキルに欠陥があることを明らかにした。損傷の程度は水銀のレベルとともに変わる。低レベルの水銀がメンタル面の発達に影響を与えることを示したのは、これが初めてという。

 バクテリアが海洋中の水銀を魚が取り込みやすいメチル水銀に変える。それが、捕食魚や魚を食べるクジラのような食物連鎖の上位に立つ動物に集積する。従って、魚食愛好者はフェロー諸島島民と同様な水銀レベルを持つことになる。

 医務官は、汚染を生み出したのはフェロー諸島ではないが、世界規模の汚染がもたらす結果は島民も受け入れねばならないと言う。

 Faroe islanders told to stop eating 'toxic' whales,NewScientist.com,11.28
 http://www.newscientist.com/article/dn16159-faroe-islanders-told-to-stop-eating-toxic-whales.html