WFP事務局長、WTO食糧援助規律強化による援助抑制に警告

農業情報研究所(WAPIC)

05.5.10

 昨年の世界食糧援助の半分を提供した国連世界食糧計画(WFP)のジェームズ・モリス事務局長が9日、ジュネーブで開かれたアフリカ及び後発途上国の代表者の会合で、目下のWTO農業交渉で取り上げられている食糧援助に関する規律が援助削減につながることがないように要請した。

 目下のWTO農業交渉では、EUや農産物輸出国が、ニ国間食糧援助計画の下での米国の食糧援助は過剰農産物処理のための輸出補助の偽装形態に当たるとして、食糧援助に関する規律の強化を要求している。それは、EUが輸出補助金撤廃を受け入れる条件でもあり、昨年7月に合意された交渉の枠組みにも盛り込まれた。EUは、食糧価格が低迷しているときに巨大な過剰生産物を放出し、あるいは販売促進のために援助を利用するのを防止するために、このような措置が必要だと論じてきた。農業交渉の核心の一つである輸出競争の規制にかかわるこの措置に国連機関が疑念を呈したことは、今後の交渉に微妙な影を落とすかもしれない。

 彼は、食糧援助は専ら現金でなされるべきだと要求するいかなる新ルールにも「絶対的に反対する」が、不器用に考案される制限も米国やフランスを含む伝統的援助供与国やインド・マラウィのような途上国からの新参供与国からの現物援助を挫く恐れがある、「交渉が適切な考慮を欠けば、多数の人々が危険に曝されることになる」と言う(Move by WTO 'is threat to food aid',FT.com-world,5.9)。

 彼は、援助量を最低1100万トン―ドーハ・ラウンドが始まった2001年の援助量―に増やすことが貿易協定の前提であるべきだと主張する。昨年の援助量は1999年から半減、750万トンにまで落ち込んだ。その一方で、慢性的飢餓人口は8%増加、8億5200万人に増えた。彼は、WTOの目的は他の供給者との不公正な競争を通しての「貿易歪曲」を防ぐことだが、援助の真価はそれが過剰生産物であるかどうかではなく、最終用途で問われるべきだと言う。

 他方、彼はWTO全加盟国に対して補助金削減を要請、その世界食糧市場への影響は「途上国の競争力を害し、先進国の金庫を出血させる」と警告したという(UN Food Aid Chief Urges WTO To Avoid Stifling Food Aid,AFP,5.9)。