米国最大の農業者団体 最低1年の農業補助金維持を求める

農業情報研究所(WAPIC)

06.7.28

  600万のメンバーを擁する米国最大の農業者団体・アメリカン・ファーム・ビューロー連盟が27日、ドーハ・ラウンド凍結後の貿易環境の下では米国農民は生き残れないと、少なくとも1年間は現在の農業補助金を維持せよと要求した。

 Statement by Bob Stallman, President, American Farm Bureau Federation, Regarding Need to Extend Farm Bill, TPA in Light of Suspension of Doha Round,06.7.27

 ブッシュ政府はドーハ・ラウンドは未だ諦めないを交渉再開に向けた圧力をかけ続けている。米国政府に与えられた交渉権限を1年延期しようとといった動きも潜行している。しかし、交渉凍結の最大の元凶とされる米国の農業補助金をめぐる動きがこのようなものであれば、そんな望みも吹き飛ぶだろう。

 現在の米国農業補助金の75%はコメ、コーン、小麦、大豆、ワタなどの主要貿易商品を生産する大規模農民に与えられてきた。小規模家族農民への恩恵はない。この補助金がこれら商品の生産コスト以下での輸出を可能にし、とりわけ途上国の小規模農民の農業生産と生計にも破滅的影響を与えているというのがドーハ・ラウンド行き詰まりの最大の原因とされてきた。

 ジョハンズ農務長官は、来年7月に期限切れとなる02年農業法の更新に際し、このような不平等な補助金政策の改革に取り組むとしてきた。大統領も、ウルグアイ・ラウンドで約束した貿易歪曲的(黄色)国内助成の60%削減という当初の提案以上の補助金削減を土壇場で提案すると言明した(G8会合)。しかし、これは国内の猛烈な抵抗で、結局は今月の最終段階の交渉でも実現できなかった。EUや途上国はそれが交渉凍結に至った最大の原因と米国を非難する。

 ウルグアイ・ラウンド約束の米国の黄色補助金上限191億ドルから60%削減すると、米国の上限は76億ドルとなる。ところが、実際の米国の最近の支払額はこのレベルか、これを多少上回るレベル(最近4年間では70億ドルから125億ドル)にまで落ちているから、現行支払に比較すればいくらの削減にもならない。その上、価格が下がれば下がるほど支払われる02年農業法で導入された限りなく黄色に近いカウンターサイクル補助金(昨年の支払額は52億ドル)は削減義務を課されない「青」の補助金(総額で半減が提案されているが)に分類替えされるから、実際の黄色補助金の支払上限は現在の支払のレベルを超えてしまう。

 だからこそ、EUや途上国は、これでは何の改革にもならないと一層の削減を要求した。しかし、米国はこの要求に応えることができなかった。それが交渉凍結の最大の原因と指弾されるのは当然のことだ。交渉再開には、このような米国の補助金改革の約束が不可欠だ。

 ところが、米国国内では補助金改革の気運はすっかり影を潜めてしまった。国内の抵抗が弱まる可能性のある秋の議会中間選挙後の交渉再開を予測する向きもあるが、最大の農業者団体が現行補助金の最低1年の延長を求めるような雰囲気では、交渉権限が1年延期されたとしても、その間に改革の見通しを立てることは不可能だ。

 ドーハ・ラウンドは死んだも同然と言うことができる。