農業情報研究所グローバリゼーション貿易制限・紛争2019年12月16日 

中国が米産農産品40億ドル輸入の大法螺 トランプの農民向け選挙戦略もこれまで

米国と中国が貿易戦争エスカレートの回避に向けた“第一歩”と称する合意に達した。トランプ大統領は“amazing deal”とつぶやく。それはそうだろう。ライトハイザー通商代表が言うように、この合意により中国が2年後に400億ドルもの米国農産品を購入するというなら、来年の大統領選で中西部=コーンベルト農民はこぞってトランプを支持することになるだろうからだ。

 だが、400億ドルなどという数字を持ちだせば、それがトランプ一流の大法螺であることも見え見えになってしまう。トランプが大統領に就任した2017年の対中国農産品輸出額は240憶ドル、この年、最大の輸出品目である大豆の輸出量は3200万トンだった。この年の大豆相場はブッシェル10ドル前後、現在は9ドル以下に下がっている。

10%ほど低いこの価格の下で(あるいは同程度の価格の下でさえ)輸出額を67%(400240)増やすには、対中輸出量はこれまでの越えたことのない世界全体への輸出量5000万トン以上に増やさねばならない。これはもう、米国の大豆生産・輸出能力を超えている。大豆価格の法外な高騰がないかぎり、中国の400億ドル輸入などあり得ない。

 中国報道にも、米国通商代表部の公式発表にも、こんな話は出ておらず、肝心のアイオワ農民も、農務長官でさえ、こんな話は信用していない。

 トランプ大統領の農民抱き込み戦略も、もはやこれまで。

Doubts raised over US claim of $40bn China farm purchases,FT.com,19.12.14‎

米中が第一段階合意、関税を猶予 ロイター 19.12.14

China, U.S. agree on text of phase one trade deal ,Xinhua,19.12.13

White House offers first details of partial trade deal with China,The Washington,19.12.13

United States and China Reach Phase One Trade Agreement,USTR,19.12.13 

Reported trade deal with China draws cautious response in Iowa from Perdue,Des Moines Register,19.12.12