英国巨大スーパーが日本に1号店 「地域最安値」の背後には何が?

農業情報研究所(WAPIC)

07.4.26

 日経新聞の報道によると、小売業世界3位のテスコ(英国)が25日、東京・練馬に生鮮コンビニエンスストア「テスコエクスプレス」を開業した。店舗面積は394平方メートルで、生鮮品や加工食品、牛乳や豆腐、弁当や総菜、雑誌など約3500品目をそろえた。牛乳や豆腐、卵など12品目は競合するスーパーの店頭価格を調査し地域最安値に設定する。この日、午前9時の開業直後には3台のレジに50分待ちの行列ができた。今後については、08年2月期に35店を新規出店するという。

 牛乳・卵、地域最安値に テスコ、生鮮コンビニ1号店 英国で開発のブランドも 日本経済新聞・朝刊 07年4月26日
 英テスコ、生鮮コンビニの日本1号店を開業  NIKKEI NET 04.26(07.00)

 消費者は大喜びかもしれない。しかし、なぜそれほどの安値を設定できるのか、質してみたくはならないのだろうか。一つのヒントは、最近、英国のチャリティー団体・ActionAidが明らかにした事実だ。これについて伝える英国・ガーディアン紙の記事は次のように言う。

 6p a T-shirt. 30p an hour for shelling cashews. Supermarkets accused of exploiting women,Guardian,4.23

 「チャリティーのために働く研究者たちは、大規模スーパーの海外でのビジネスのやり方に関する証拠を収集するのに9ヵ月を費やした。彼らは、商品供給者を排他的取り決めに縛りつけ、一層有利な取引条件を引き出すために常に調達先リストから外すと脅かし、購買力を増すために巨大な国際購買者グループを組織している英国企業の数多の例を発見した。

 ActionAidは一例として、英国スーパー間の最近のバナナ価格戦争をあげる。この戦争で、テスコ、アスダ、セーンズベリーに供給するプランテーションで働く正規労働者婦人は、臨時雇いの出来高払い低賃金労働者になることを余儀なくされた。」

 その他、次のような例があげられている。

 ・コスタリカのプランテーション婦人労働者の賃金は時間あたり33ペンス(約78円)にすぎず、飛行機が危険な農薬を撒くときにも休みを取れない。

 ・バングラデシュでは、アスダとテスコのための衣類を作る若い婦人の時給は5ペンス(12円)にすぎず、おまけに一日14時間も働かされている。

 ・インドでは、英国スーパーの価格引き下げ圧力でブラック市場カシューナッツ加工工場が台頭、その婦人労働者の日給は30ペンス(71円)にすぎず、かつ腐植酸により常に手が痛めつけられている。

 ・カシューナッツの最終小売価格の45%はスーパーが受け取り、54%はロースター・輸入業者・生産者の受け取りと輸送コストに消える。加工労働者は1%を手にするにすぎない。

 スーパーの2ポンド(475円)のTシャツからスーパーは1.4ポンドを手にし、バングラデシュの労働者は6ペンス(14円)を受け取るだけである。

 日本の1号店もそうだとは言えないし、そう言うつもりもない。日本にもActionAidのような組織が現れ、調査を進めることを望むのみである。しかし、このような安売りが、日本の牛乳、卵、豆腐などの供給者に対する圧力を増すことは確かだろう。自分が住む近辺にこの店が現れたとしても、とても喜んで買う気持ちにはなれない。