サルコジ仏新大統領 WTO、グローバル化からフランス農業、欧州市民を護れ

農業情報研究所(WAPIC)

07.5.24

  フィナンシャル・タイムズ紙が報ずるところによると、サルコジ仏新大統領が23日夜、大統領として初めて訪問したブリュッセル(EU本部)で、ヨーロッパが世界貿易交渉で一層厳しい立場を取ることを期待し、またフランス農民が”最低価格”で売られるのを許さないと、世界に向けて警告を発した。

 Sarkozy to champion Europe in trade talks,FT,5.23

 彼は、大統領に選ばれる前の3月、フランスの最有力農業者団体の農業経営者連盟(FNSEA)の代表者を前に、フランス農業の”存立にかかわる利益”を防衛するため、WTO農業交渉で譲歩しすぎの欧州委員会から通商交渉権限を取り上げるとぶちあげていたが(北林寿信 仏大統領にサルコジ氏 WTO交渉にどう影響 日本農業新聞 07.5.8)、この日は、米国農業者が補助金の恩恵に浴しているときに、ヨーロッパ農業者への助成を削減することは許さない、「サービス市場の開放を勝ち取るために農業を売りに出そうとは思わない」と語ったという(欧州委員会は、とりわけ途上国がサービスなど他の分野の自由化で譲歩すれば、EUも農業分野で現在の公式の立場以上の譲歩も考えると再三表明してきた)。

 もっと一般的には、EUがグローバリゼーションに対する防衛措置を取るように期待を表明した。「ヨーロッパはその市民を保護しなければならない」、「ヨーロッパは自身、グローバリゼーションに備えねばならない。それに飲み込まれてはならない。グローバリゼーションはヨーロッパのトロイの馬であってはならない」と語ったという。

 米国流経済自由化・規制緩和による経済構造改革を標榜してきた新大統領のことだから、わが国同様に農業構造改革の流れが加速するのは間違いないだろう。しかし、これ以上の貿易自由化は、このような改革さえも潰してしまうと認識しているところは、わが国の政府や改革論者とは違うようだ。日本で目論まれているような豪州どころか、米国・EUとの経済連携協定まで視野に入れた農業貿易自由化が進めば、”改革の担い手”と期待される”企業”さえも潰れるほかない。