タイ市民グループ、オーストラリアとのFTAはタクシン首相の私益のため

農業情報研究所(WAPIC)

04.7.5

 タイのタクシン首相は今週オーストラリアを訪問、両国間で合意したとされるタイ・豪自由貿易協定(FTA)に調印する。それを前に、市民グループ、活動家、反対者がオーストラリアとのFTAに反対する連合を形成、タクシン首相は、その家族が多大な利害関係をもつ電気通信分野の投資機会のために、国の経済的主権を取引していると暴露した。

 5日付のバンコク・ポスト紙によると(Thaksin's family `biggest winner',Bangkok Post,7.5)、グループは、政府は国民の審査を避けるために、協定の内容をラップに包んでいるが、首相の関心は、彼のShin Corporationが市場で支配的地位を占める電気通信分野の利益を最大限にすることにあるのだと言う。彼らによれば、政府は、国の産業を崩壊させるオーストラリアの農業・食料産品をタイ市場に溢れさせることの見返りに、オーストラリアの電気通信コングロマリットへの投資を確保しようとしている。タクシン首相は、オーストラリアの電気通信事業への参入の機会と、数百万の農民の将来をバーター取引しているというわけだ。グループは、国のリーダーとしては「恥知らずで、全くもって非倫理的だ」と言い、FTAを国民投票にかけるように要求している。

 グループによれば、オーストラリアは電気通信分野のタイ企業による衛生利用への無規制のアクセスと投資の自由化を許す。国内農産物は関税が廃止され、輸入割当も緩和される。中国との競争で苦境にある農業は、さらに悪化の道を辿るだろう。タイの鉱業、建設、小売、酪農、肉製品部門は、とりわけ大きな打撃を受ける。オーストラリア企業は、タイの鉱業企業の株の62%、建設・小売企業の株の100%までの所有を許される。 

 首相は、FTAはタイにとって自由で公正なものになると約束、反対者は情報を完全に理解していないと主張している。しかし、交渉過程は非常に不透明で、国民には協定内容も十分に知らされていないのは事実である。NGOが時折暴露することが、真相を知るための唯一の手がかりとなってきた。首相の旗振りによって驀進するタイのFTA路線には、常に私益優先の影がつきまとっている。