タイ、韓国、中米の反対米FTAグループが連合を結成 強まる途上国のFTAへの抵抗

農業情報研究所(WAPIC)

06.8.8

  タクシン首相の下で米国・日本をはじめとする多数の国との自由貿易協定(FTA)交渉に狂奔してきたタイの反FTA運動が、世界中の国々とFTAを結ぼうとする米国の動きに抵抗する韓国・コスタリカ・コロンビアなどの国々の反FTAグループとの連合を結成した。

 7月末に開かれた19ヵ国のFTA反対社会運動の指導者の3日間のワークショップの後、タイの環境団体・”生物多様性行動タイ”(Biothai)が、情報と経験を交換するネットワークを形成、米国とのFTA交渉の影響と隠された議題の分析と共同研究を実施することに合意したことを明らかにした。

 Anti-FTA bodies join forces against US deals,Bangkok Post,8.2
 
http://www.bangkokpost.com/020806_Business/02Aug2006_biz23.php

 ”消費者財団”指導者は、政治改革が実施されるまでは、政治的混乱で中断しているFTA交渉の再開は許されないというタイNGOの立場は変らない、エコノミストと草の根ブループは、”破壊的な”FTAに代え、王国の適度に満ち足りた生活の経済哲学がタイ経済の開発にいかに適用できるかを研究すべきだと言う。

 コスタリカのNGOシンクタンク・”連帯思考”(Pensamiento Solidario)の代表は自国の経験を語り、何よりの問題は人々がFTA論議に関心をもたなかったことだが、様々な分野における影響の研究を掘り下げれば掘り下げるほど、人々が一層議論にかかわり、FTA反対が高まったと言う。「我々の研究は、FTAは、関税引き下げによりタンクのような重兵器の米国からの輸出に道を開くことを明らかにした。これは人々の間に反米感情と激怒を生み出した」と語った。

 彼女によると、コスタリカ政府は密室に隠れて中米自由貿易協定(CAFTA)に調印したが、人々は北米自由貿易協定(NAFTA)締結後のメキシコや3年前に米国とのFTAに調印したチリの経験に学んだ。コスタリカ人は、議会がこの協定を承認するまで政府に圧力をかけ続ける、「我々は5月以来新たな議会を持つことになり、10人以上の議員が既に反対投票をすると約束している。しかし、なお20人以上の反対投票が必要だ。彼らが協力しないならば、再び街頭行動に戻る」と言う。

 コロンビアの”全国農牧救済協会”(Asociacio{aac}n Nacional por la Salvacio{aac}n Agropecuaria)の代表は、米国の大変な介入にもかかわらず、100万人が首都に参集した、「先住民の人々が高速道路を封鎖、政府は人々を撃った。しかし、我々はFTAを議会に審査させることができ、10月には再投票されるだろう」と言う。コロンビアもタイ同様、政府の秘密主義と厖大な協定文書に直面している。コロンビア法のお陰で、協定は上下両院や憲法裁判所で審査されねばならず、NGOが多数の条項・付属文書・注釈の下に埋もれた条件を解読する多少の時間的余裕が与えられるという。

 米韓交渉の最近の第二ラウンドは、10万の人々の抗議行動と労働組合の一日ストのために、計画半ばで打ち切られた。韓国農民連盟の代表は、農民は以前のチリとの協定から学び、サービス部門、労組、芸術家、映画スター、学界を含む他の関係者との同盟を作り上げた、その結果、デモの前後に繰り返された世論調査では、韓国国民の半分が新たなFTAに反対するようになったと言う。

 実際、7月20-22日にソウル・エコノミック・デーリーが行った40−50歳代の1000人の男性を対象とする調査では、50%の回答者が米国とのFTAに反対、賛成を3.7%上回った。反対は6月7日(第一ラウンド交渉開始前)調査の29.2%、7月6日調査の42.6%から増え続けている。

 Half of Koreans Oppose US FTA,Korea Times,7.31

 なお、韓国農村経済研究所(KREI)の最近の報告は、米韓FTAによる関税撤廃や引き下げで、韓国の農業生産高は1兆ウオンから2兆ウオン(1200億-2400億円)減少すると推定している。これには、米国が協定に含めるように要求し、韓国が反対しているコメの生産損失は含まれない。もしコメも含めると、損失は7兆ウオンに膨らむという。

 U.S. FTA to cause big drop in agriculture output: report,Yonhap,8.4

 バンコク・ポスト紙によると、タイでは学界も米国や日本との交渉も含むFTA交渉に対抗するNGO勢力に合流した。

 Joint effort to ensure a level playing field,Bangkok Post,,8.7
 
http://www.bangkokpost.com/News/07Aug2006_news03.php

 タイ米FTAの問題と教訓に関するセミナーで、チュラロンコーン大学アジア研究所のSurichai Wunkaeoは、タイは大衆の参加なしにで不透明で非倫理的な政府に交渉を任せるわけにはいかないと語った。

 また、マレーシアの第三世界ネットワークのHira Jhamtaniは、マレーシアは日本とFTAから大変高価な教訓を得た。「マレーシアの轍を踏んではならない。タイの協定文書はマレーシアと同類で、WTOの義務を超える義務が含まれる」と語った。

 インド・ジャワハルラル・ネルー 大学のJayati Ghosh教授bは、途上国は交渉に入れば米国の実質的市場アクセスを得られると思っているが、損失、特にサービス部門の損失を適切に見積もっていないと語り、インドWTO研究センターのMurali Kallummalは、カナダ、メキシコ、オーストラリアは望む米国市場アクセスを得られなかったと語ったという。

 ドーハ・ラウンド凍結で、米国や日本のFTA推進にはますます拍車がかかるだろう。しかし、これら政府は、それに対する抵抗もますます強まることを覚悟せなばならないだろう。