タイ 米国のアジア太平洋自由貿易圏構想に反対 「足るを知る経済」を追求

農業情報研究所(WAPIC)

06.11.11

  タイが、アジア太平洋協力(APEC)の自主的貿易協定を法的拘束力のあるアジア太平洋自由貿易圏に格上げしようとする米国の構想に、それは不要でもあり、実行不能でもあると反対する。米国は、今月18-19日にベトナム・ハノイで開かれるAPEC首脳会議の宣言に、加盟21ヵ国・地域によるアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の検討に着手することを盛り込もうと各国に働きかけている。

 しかし、タイ商務省のチュティマ通商交渉局長は、APEC21ヵ国の経済は余りに違いが大きく、この構想は実行不可能だと語った。彼女はまた、スラユット首相は、タイ王室が主唱する「足るを知る経済( Sufficiency Economy )哲学」が市場経済を妨げるものでないことを国際社会に説明する機会としてAPEC首脳会議を利用するだろうとも語ったという。バンコク・ポスト紙が伝えた。

 Thais against Apec FTA,Bangkok Post,11.10
  http://www.bangkokpost.com/101106_Business/10Nov2006_biz50.php

 局長は、さらに、通商交渉局は、既に発効している二国間貿易協定、あるいは未発効・交渉中の協定の見直しを進めており、来月の閣議でこれら協定の是非に関する”最善のアドバイス”を提出するとも語った。

 これら協定には、既に発効しているオーストリラリア、ニュージーランドとの自由貿易協定や中国・インドとの果実・野菜・工業製品に関する協定、日本との間で調印した経済連携協定、タクシン首相の失脚で交渉が中断している米国との自由貿易協定などが含まれる。

 タクシン前首相の下で推進された二国間貿易協定によるタイの貿易自由化路線は、新政権の下で大きな転機を迎えているようだ。「足るを知る経済」の実現に向けて大きく前進することを期待したい。

  この経済哲学に基づく王室プロジェクトの目的は、「人間の自立のための開発であるといえます。国王陛下のプロジェクトにおける重要な原則の一つは、開発は地理的・社会的条件に合わせて行われなければならないということです。この開発には、現代技術と知識の適切な発展が求められるのみではなく、持続性の原則と天然資源の開発に基づいて行われなければなりません」と説明されている。これは、日本も含む世界が今まさに求められていることだ。