韓米FTA 協定文なお確定せず 調印・批准に漕ぎ着けるのか

農業情報研究所(WAPIC)

07.5.25

  米国・韓国両政府が24日、先月はじめに合意した韓米自由貿易協定(KORUS FTA)の全文を漸く発表した。ただし、これは労働権、環境保護、その他の問題に関する米国政府・議会の最近の合意(韓米FTA実現に新たな難関 米政府・議会の貿易協定新指針合意で協定再交渉も,07.5.16)を反映しておらず、最終的に確定した協定文ではない。政府と議会は、なおその合意を公式協定文に転換する過程にあり、それが終わったときに、これを反映するために韓国と共同作業に入ることを期待するという。

 USTR Press Release:States -Korea FTA Text Available on USTR Website,07.5.24。

 しかし、こんなことで、議会の修正なし一括承認(または拒否)を可能にする貿易促進権限(ファスト・トラック法)法の期限が切れる7月1日までの米議会批准に間に合うのだろうか。韓米FTAが実現するかどうか、ますます怪しげになってきた。

 米下院歳入委員会の有力メンバーは22日、必要な90日の審査期間の半分以上が過ぎ去ろうとしているのに、協定の詳細は、大部分の議員と国民には未だに”秘密”になっていると不平を述べる書簡をシュワブ通商代表に送った。ランゲル同委員会議長は、「議会のすべてのメンバーに、協定を審査し、コメントする意味ある機会を持つ資格がある」、「協定文発表は期限切れだ」と述べた。

 議員の間には自動車部門の合意は韓国に一方的に有利ではないかという不満がある。その上に、政府と議会の新たな合意も反映させねばならず、それには韓国との再協議も必要となる。あと1ヵ月あまりで、議会が納得する協定文を完成できるのだろうか。

 Lawmakers urge Bush release Korea trade deal text Reuters via Yahoo!News,5.23

 韓国側からの情報では、韓国と米国は、5月29日から6月6日まで、ワシントンで最終協定文仕上げのための協議を行い、6月末の調印が予想されるとという。

 S. Korea publicizes full text of FTA with U.S., criticism expected,Yonhap,5.25

 しかし、漸く明らかになった協定全文(案)が、今後韓国内にどんな反応を呼び起こすか、なお不透明だ。予定通りに事が運ぶだろうか。とりわけ今回初めて明らかになった農業にかかわる協定の詳細は、韓国農民の一層の反発を呼び起こす恐れがある。

 米は例外扱いとなった。しかし、その他すべての農畜産物の輸入関税は撤廃される。牛肉、冷凍・加工豚肉製品、生鮮・冷蔵豚肉製品、鶏肉、イチゴ、リンゴ・ナシの輸入関税についてはそれぞれ15年、2014年まで、10年、10-12年、9年、10年(フジとアジアナシは20年)の猶予期間が与えられたものの、いずれ撤廃せねばならない。

 他方、小麦、飼料用トウモロコシとトウモロコシを原料とするエタノール生産副産物飼料、圧搾用大豆、皮革と綿、そしてナッツ(アーモンドとピスタチオ)、バーボンウィスキー、ワイン、ブドウ、グレープジュース、サクランボ、フレンチフライ等のジャガイモ製品、冷凍濃縮オレンジジュース、アスパラガス・ナス・セロリ・キュウリ・ホウレンソウ、加工トマトとトマトペーストのような広範な品目の関税は即時撤廃される。

 その他、関税即時撤廃を免れるレモン・グレープフルーツ・アボガド・乾燥プラムなどの果実類、非柑橘(クランベリー、プルーン)ジュース、生鮮ニンジン・ブロッコリ・カリフラワー・エンドウなど野菜類も2年から5年の間に関税を撤廃せねばならない。

 これでは、激化する競争を何とか逃れて韓国農家が生き残るための隙間さえすべて塞がれてしまう。

 USTR,Korea FTA: Agriculture Fact Sheet,07.5.25

  先の聯合ニュース(Yonhap)は、「どちらの大統領も不人気で、それぞれの立法機関における支持も弱いから、両サイドのよる議会承認は難しくなりそうだ」と言う。