農業情報研究所グローバリゼーション貿易制限・紛争>ニュース:2014年7月18日

国有企業をめぐる米中貿易紛争 WTOパネルで米国が敗訴 TPP交渉にも影響?

 WTO紛争処理パネルが7月15日、中国国有企業の多くの輸出品に対して米国が課している相殺関税は不当とする判決を出した。

 この紛争に関わる品目はソーラーパネル、風力発電塔、感熱紙、食器棚など、多種多様な17品目に及ぶ。米国はこれらの対米輸出品に、国有企業として享受している補助金の利益を相殺するWTO法上の「相殺関税」を課している。中国は、これら相殺関税に関する米国商務省(USDOC)の調査やその最終結論がWTO「補助金及び相殺措置協定(SCM協定)の諸条項に違反すると訴えた。また、政府の過半数所有だけで(つまり国有ということだけで)企業を補助金の恩恵に浴する「公共団体」(SCM協定第1条)として扱うに十分とするUSDOCの「反証可能な推定(rebuttable presumption)」にも挑んだ。

 パネルは、国有企業は政府の過半数所有を理由に単純に「公共団体」であると考えることはできない、米国は中国国有企業が”政府の機能”を果たしていること、あるいは”政府の権限”を行使していることを立証せねばならないと判じた。補助金は相殺措置の対象となる産業・企業特定的なものだ、中国が維持する輸出制限に照らしても財政支援の存在は明らかだといったUSDOCの主張も退けた。米国は、その措置をSCM協定の下での義務に沿うように改めねばならない 、問題の諸措置はSCM協定の一定の条項と整合しない程度に応じて取り消すか、軽減せねばならないと結論する。

 なお、同日、やはり国有企業をめぐる米国とインドの紛争についても、米国敗訴のパネル報告が出た。

 米国(と日本)は、環太平洋連携協定(TPP)交渉において国有企業に関する厳しいルールを強い、途上国の反発を買っている。これらの判決は、TPP交渉における国有企業をめぐる論議を一層複雑・困難にする可能性がある

 WTO issues panel report on US measures on certain products from China,WTO,2014.7.15

 WTO issues panel report on US measures on Indian steel products,WTO,2014.7.15