農業情報研究所グローバリゼーション貿易制限・紛争>ニュース:2018年625

 酪農・乳業もトランプ貿易政策の犠牲者 牛乳は畑に棄てる?

先日、トランプ大統領が仕掛けた貿易戦争で米国中西部大豆・穀物農家が瀕死の危機に直面していると書いた(トランプが仕掛けた対中貿易戦争 米国中西部農民が名誉の戦死? 18.6.20)。しかし、“アメリカ・ファースト”を唱えてアメリカ産業の再生をめざすトランプ貿易政策の犠牲者は大豆・穀物農民だけではなく、チーズ工場や酪農農家でもあった。米国乳製品の大輸出市場をなすカナダ・メキシコその他の国が、工業製品に対するトランプの高額関税賦課に対する報復措置として米国乳製品に対する輸入関税を大幅に引き上げようとしており、おまけに北米自由貿易協定(NAFTA)や12ヵ国TPPからの離脱で、アメリカの乳製品輸出市場が他国に侵食されれる恐れが強まっているからだ。

 カナダと共にNAFTAを構成するメキシコはアメリカチーズの最大輸出国であり、米国から輸出されるチーズの4分の1位以上を吸収している。そのメキシコは15%の関税を課し、75日からは25%に引き上げる。トランプ氏は68日、ツィッターで、カナダは乳製品に270%の関税を課すとつぶやいたそうである。その上、トランプ氏はカナダ、メキシコばかりでなく日本を含む新市場を含む12ヵ国TPPからも離脱した。

 ウィスコンシンの100以上の酪農場から買い入れる牛乳でチーズを製造する乳業会社・Sartori CompanyJeff Schwager社長は、“輸出市場から締め出されたらミルクを畑にぶちまけることにもなりかねない”、大きな影響が州全体に及ぶと言っているとのことである。

 Trump’s Trade War Could Shut Cheesemakers Out of Foreign Markets,The New York Times,18.6.25

 こんなアメリカ・ファースト貿易政策、何時までのさばるのだろうか。言い換えれば「個人の啓示や英雄的行為その他の指導者的資質に対する、まったく人格的な帰依と信頼に基づく支配、つまりカリスマ的支配」(マックス・ヴェーバー 職業としての政治 岩波文庫)、何時まで続くのだろうか。日本の安倍政権といい、まったくわけの分らん世の中になったものだ。

 確かなことは、今の社会、カリスマ的指導者に服従することで「物質的な報酬と社会的名誉」、「官職の独占に基づく被治者の搾取や政治的な役得」、さらには「虚栄心の満足」を求めることを「さもしい」と思わない人間ばかりが威張り腐っているということだ。