農業情報研究所


EU:欧州委員会、GM作物増加を要請

農業情報研究所(WAPIC)

01.10.9

 1999年5月20日、英国「ネイチャー」誌は、トウモロコシ畑周辺に自生し、オオカバマダラという美しい渡り蝶が食するトウワタの葉にBTトウモロコシの花粉をかけ、これをこの蝶の幼虫に食べさせる実験をしたところ、4日間で44%が死んだというコーネル大学の研究報告を掲載した。これは世界中に衝撃的影響を与え、EUも直ちに遺伝子組み換え作物(GM作物)承認の事実上の「モラトリアム」体制に入る。

 しかし、その後、EUは「モラトリアム」解除に向けて着々と準備を進めてきた。新たな製品の承認前に一層厳格で、透明な規制のフレームワークを求める各国政府の要求を受けて、今年3月には新たなフレームワークが承認された(未発効)。7月には、委員会がGM作物の表示とトレースに関するルールを採択し、欧州議会と加盟国政府の承認を待っている。そして、欧州委員会は、新たなGM作物承認を各国政府に強く求めるようになっている。

 7日付けの「Independent on Sunday」が明らかにしたところによると、委員会は16日の15カ国会合に向けて「モラトリアム」解除を要請している。そこに見られるドキュメントによれば、委員会は、指令の発効前にも承認されたGM食品を倍増、GM作物は3倍増することを望んでいる。その背景には、欧州バイテク産業と関連部門の米加に比べての深刻な遅れへの懸念がある。米加においては、承認された食品向け遺伝子組み換え体(GMO)は50にのぼるのに対し、EUでは13にすぎない。

 しかし、この動きに、環境保護団体「地球の友」は公衆衛生と環境に関する懸念を無視していると反発している。

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