農業情報研究所


オーストラリア研究者、菜種の花粉は遠くまで飛散するが、受精率は微小と発表

農業情報研究所(WAPIC)

2002.7.4

 オーストラリアの研究グループが、カノーラ(菜種)の新品種の花粉は最大2.5kmまでの範囲に拡散するが、他のカノーラが受精する比率は微小という研究結果を発表した(Mary A. Rieger et al,Pollen-Mediated Movement of Herbicide Resistance Between Commercial Canola Fields,Science,28 June 2002,Volume 296, Number 5577,p.2401)。汚染は、オーストラリアや海外の当局が非GMと認める限界レベルの1%をはるかに下回っていた。このために、研究者は、遺伝子組み換え(GM)作物の花粉飛散により非GM作物が汚染されるのを恐れるGM作物反対者の不安が鎮まると期待している。

 このカノーラはGM品種ではなく、パイオニア社が通常の育種法で生産した除草剤耐性の新品種で、20002001年に初めて農民に販売されたものである。研究者は、GM作物と非GM作物のビヘイビアは類似しているから、この発見はGM作物にも適用できるとしている。

 研究は、この品種が新しいもので、周辺地域がその遺伝子で既に汚染されていないことを利用して、この新品種が栽培された圃場に近くにある通常カノーラの圃場の三つのスポッから大量の種子を収集、その汚染状況を調べたものである。新品種の花粉は、恐らくは風や昆虫(蜂)により広範に飛散、最大2.5km離れたところまで達したが、最大0.2%の汚染が発見されただけであった。研究者は、GM作物の小規模圃場の実験では、商業栽培による汚染を正確には予測できないと、この研究の実際的価値を強調している。

 しかし、花粉が予想以上に遠くまで飛散することを明かにしたこの研究は、研究者の期待と裏腹に、有機農業者の反対を一層あおる結果となったようである。オーストラリア有機連盟は、GMフリーか、GMのどちらかしかないと汚染の限界に基づく規制システム自体に反対、GMカノーラの商業栽培の「モラトリアム」を改めて要求している。有機農業者に限らず、ニュー・サウス・ウエールズ(NSW)州の通常農民のなかにも、今年末のNSW農民連盟会合で4年間のモラトリアムを求める動きが現れている(Fresh call to bar GM after study,,smh.com.au - The Sydney Morning Herald,6.29)。

 関連情報
 オーストラリア:GMカノーラの商用栽培、初の許可、有機農業者が反発,02.6.24

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