インドはGM米を生産してはならない―ヒンドゥ紙掲載意見

農業情報研究所

04.4.5

 ニューデリーの「遺伝子キャンペーン」を率いるサハイ博士が、米の原産地と多様性の主要中心地であるインドで遺伝子組み換え(GM)米を生産してはならないと論じている(Should India cultivate GM rice?(Opinion by Suman Sahai),The Hindu,4.5)。以下はその抄訳紹介である。

 今年は国際米年、世界の一部での生産性低下と人口爆発のために、世界の人口の半分近くの基礎食料である米が不足する恐れに関心が集まっている。解決策としてGM米が議論されており、インドその他の官民研究機関が様々な特性をもつGM米を生産するプロジェクトを始動させている。ゴールデンライスは既に有名だが、菌類病抵抗性や除草剤耐性を導入した米やBt米、澱粉質改変米、さらにスターリンク・コーンに使用された遺伝子・Bt cfry9Cを導入した米を生産する試みがなされている。

 基本的問題は、インドが米の原産地と多様性の主要中心地をなす「高リスク地域」である故に、GM米の栽培を許すべきかどうかということである。コーンの原産地と多様性の中心であるメキシコは、GMコーン栽培も研究も禁止する明確な政策を取った。世界のもう一つの基礎食料であるコーンの遺伝子プールを防衛するためである。原産地の中心は、数千年昔に特定作物が生まれた場所である。食料作物は森林からは収集されない。それは、自然の中に見出される野生植物から部族や農業共同体により注意深く選抜され、交雑されて開発されたものだ。原産地の中心は、GM品種に含まれる外来遺伝子が自然の遺伝子プールに移動すれば結果が破局的であるために、GM作物の高リスク地域と考えられる。

 農業バイテクを推進する科学者は、稲は自家受粉作物で、外部の花粉や遺伝子を受け入れないと言うが、これは真実に反する。最近の中国とラテンアメリカの研究は、GM稲と他の稲の間の遺伝子移動が心配を生むほどの率で起きたことを示している。除草剤耐性遺伝子が野生種に移動、新たば防除困難な雑草を生み出す可能性を発見した実験もある。別の研究は、遺伝子操作による外来遺伝子導入が、外来遺伝子を受け取る植物に「ジーン・サイレンシング」(一定遺伝子が働かなくなること)を引き起こす可能性も示した。これは、不注意な科学者によりこれが自然の遺伝子プールの広がれば、重大な結果を招くことを示す。

 遺伝子の多様性は、どこかである作物が病気や土壌・自然環境の変化で脆弱になったとき、他の品種を作り出すために不可欠である。GM稲が一定の遺伝子の働きを奪ったり、他の遺伝子の正常な働きを変えたりすることで稲の自然の遺伝子プールを損傷すれば、世界の米食地域の食糧安全保障に恐るべき影響を与える。

 外来遺伝子が植物のような生物の遺伝物質に突如として押し込まれるときに何が起きるか、ほとんど分かっていない。少しばかり分かっていることの大部分は否定的なものだ。GMに関する仕事では予防原則が中心となる。インドは、外来遺伝子の移動の稲の多様性への影響を理解する確かな研究がインドの条件の下で行われるまで、GM稲を栽培してはならない。

 GM以上の成果を約束するいくつかの別の方法がある。マダガスカルにより切り開かれた稲集約化システム(SRI)は、インドを含む様々な国で目覚しい成果を示している。