米国 実験GM作物の安全性自主評価指針策定へ―世界の消費者をリスクに曝す米国実験作物― 

 農業情報研究所(WAPIC)

04.11.27

 米国食品医薬局(FDA)が19日、食料・飼料に利用するための開発途上の新たな遺伝子組み換え(GM)品種の中の新たな蛋白質の安全性評価に関するガイドライン草案を発表した(FDA Proposes Draft Guidance for Industry for New Plant Varieties Intended for Food Use)。企業がFDAと最終的協議をする前に、こうした蛋白質が偶然に食料・飼料に入り込む可能性に対処するためという。

 その背景として、新たな植物品種の開発・販売の方法が劇的に変化していることをあげる。GM植物の屋外実験の数と多様性は増す一方で、屋外実験による商用栽培圃場への花粉移動による交差汚染や屋外実験中に生産される種子の商用種子や穀粒との混合が起きる確率も増している。これは、FDAとの自主的協議を通して評価されたことのない新たな植物品種からの微量な物質が食料に入るという結果につながり得ると言う。

 FDAは、このうよな微量な物質からくるリスクは、アレルゲンか有毒物質となり得る新たな蛋白質を含む可能性に限定されるとした上で、開発者が開発の比較的早い段階で新たな蛋白質の食品としての安全性に関する情報をFDAに提供することを提案する。これに対して、60日以内の書面でのコメントを求めている。

 今までのシステムでは、GM作物を開発中の企業は、あり得る科学上・規制上の問題について開発の早い段階でFDAと協議することを奨励されたいたが、新たなガイドラインの下では、企業は自主的な安全性評価を実施し、その結果を提出するようにも求められることになる。FDAは、「このようなコミュニケーションは、新たな植物品種の新たな蛋白質に関するあり得る食品安全上の問題が、その食料への偶然の移入に先立ち解決されるように保証する」と言う。

 新ガイドラインは、一見すると安全レベルの向上に役立つように見える。しかし、環境・食品安全運動グループは強く批判している。このような企業の自主的評価(義務ではない)は、彼らが求めてきた栽培前の厳格な義務的テストの貧弱な代替手段に過ぎないと言う。ワシントン・ポスト紙によると、消費者安全センターのマンデルソン法務理事は、「これは我々が必要だと言ってきた完全な義務的テストへの道に我々を乗せるものではない。問題にバンデード張ろうとするもの」と言う(FDA to Issue Guidelines On Evaluating Biotech Food,The Washington Post,11.24)。

 さらに、インター・プレス・サービス(IPS)によると、地球の友・米国の研究アナリストであるビル・フリース氏は、FDAは新たな蛋白質からのリスクをアレルゲンと有毒物質に限定しているが、「政府はテストされなかった実験物質による食料汚染を許している。これらのルールが実際に行うことは、企業が汚染の法的責任を回避するのを許すことだ」と言う(U.S:Crop Testing Rules Menace Food Supply, Say Critic.11.25)。つまり、スターリンク事件や実験していた薬剤生産用GMコーンによる食用作物汚染(02年のProdiGene社事件)のような問題が起きても、企業が一切の責任を回避できるようにする巧妙なやり方というわけだ。バイオテクノロジー産業機関(BIO)のフィリップス副会長も、「新たなルールは企業が汚染責任を逃れるのを助ける」と認めたという。

 地球の友によると、米国では少なくとも2万3,000haに実験GM作物が栽培されている。モンサント、デュポン、その他の少数の多国籍企業が1,017の屋外実験許可を得ている。フリース氏は、その中の「抗菌性作物はアレルギーを引き起こすタイプの蛋白質を持つように見える」が、実験作物の半分しか表示がないから、どんな実験作物が栽培されているかを正確に知るのは難しいと言う。

 地球の友・ヨーロッパのアドリアン・ベブも、「米国での実験の秘密性のために、誰も―食品企業も、政府でさえも―食料製品、あるいは輸入食品の汚染検査ができない。何をテストしたらいいのかも分からないのだから。このために、世界中の消費者がGM食品の新たなリスクに曝されたままになっている」と語ったという。

 食料を大きく米国に依存する日本も同様だろう。リスクを回避しようにも、「何をテストしたらいいかも分からない」のでは、手の打ちようがない。