ミネソタのインディアン居留区、野生イネ保全のためにGM導入を禁止

農業情報研究所(WAPIC)

05.3.25

 米国・ミネソタ北部のインディアン居留区・ホワイトアースが遺伝子組み換え(GM)野生イネの導入・栽培を禁止する米国初の保全区となった。有機消費者協会のニュースが伝えている(Organic Consumers Association,Native Americans in Minnesota Demand Ban on Genetically Engineered Wild Rice,3.14http://www.organicconsumers.org/ge/rice031405.cfm)。

 この地の湖や河川は野生イネの理想的自生地で、ここに住むオジブエ族は、古来、このイネを重要食糧源としてきた。それだけではない。オジブエ族にとって、それはただの植物ではない。昔の予言者は、オジブエを東海岸の発祥地(セントローレンス湾)から中西部、野生イネが豊かなこの地に誘った。野生イネは創造者からの聖なる贈物と考えられている。

 ところが、このような貴重な資源が遺伝子操作で脅威に曝される恐れがある。彼らは、ここをGM野生イネ禁止区域にしようと運動してきた。それが漸く実ったわけだ。かれらは、GM野生イネの禁止を州全体に広げようと議会に働きかけている。彼らは、数世紀にわたり生存してきた野生イネが遺伝子汚染の犠牲になることを恐れる。ホワイトアースの野生イネを国際的に販売するホワイトアース土地回復プロジェクトの創始者であるウィノーラ・ラデューク氏によると、彼女はGM野生イネの州全体での禁止を迫っており、世界中で生物多様性と食糧の文化的アイデンテティーを促進するスローフード・インタナショナルと連携してきた。

 彼女は、「我々はそれが保護されるべきと信じる。それが遺伝子組み換えをされてはならない。・・・ミネソタ州もそれを同様に保護すべきだ。それは、わが州の歴史と文化の価値ある、不可欠の一部をなすからだ」と言う。

 21日付けのミネソタ地方紙・Star Tribuneも、社説でこれを支持した(Editorial: Wild rice/No need to mess with genome)。それは、野生イネは1977年以来、州の穀物(日本で言えば県花のようなものか)になっているだけでなく、オジブエの人々にとっては創造者の贈物であることを強調、オジブエの指導者は脅威を誇張しているとよく言われるが、彼らが本来もっていたものの大部分を失わせてきた白人との関係の歴史を考えると、最後に残された野生イネを死守しようとするのは「理解できるし、正当化される」、さらに「ゲノムでもて遊ぶ理由もない」と言う。野生イネはオブジエにとって重要な食糧をなすニッチな(市場の隙間)作物だが、他の多くの人もときには買うとも言う。

 バイオテクノロジーに血道を上げる研究者・開発者は、神からの贈物など何の価値もないとあざ笑うだろうが、それは自分自身をそっくりそのまま人造人間として創り換えてからにして欲しい。多種多様な生き物がどのようにして創られてきたのか、それらの相互作用がどう現在の生態系を創り上げてきたのか、誰も知らないのだ。