干ばつで沸き立つブラジルのGM作物・モノカルチャー論争

農業情報研究所(WAPIC)

05.4.5

 南部ブラジルの干ばつが国の大豆の15%を生産するリオグランデ・ド・スル州の今年の大豆収穫の劇的減少を招き、遺伝子組み換え(GM)大豆をめぐる論争を沸き立たせている。国連開発計画と環境計画の後援を受けているインター・プレス・サービスが報じた(BRAZIL:Drought Takes Toll on Transgenic Soy,Inter Press Service,4.1(http://www.ipsnews.net/interna.asp?idnews=28105))。

 地方の生産者の報告によると、この南部の州の大豆生産の大部分を占めるGM大豆は非組み換え品種よりも損失が大きいという。州の種子生産者協会のバリソン会長は、GM種子がアルゼンチンから密輸されたもので、地方の気候に合わせて作られたものではないから予想されたこと、水不足への耐性が小さいことが証明されたと言う。ブラジルの国家機関が開発し、地域に認証され、適合した非GM品種の成果の方が良かった。収穫の損失は畑の条件により異なり、非GM大豆の方が最大25%収穫が多かったとされる。

 除草剤耐性のGM大豆を開発、除草剤・グリホサートと組み合わせて販売するモンサント社のブラジルでの開発指揮者のミランダ氏は比較を拒否、このような厳しい干ばつに耐えられる品種がないから、収量の違いは検証できないと言う。彼は、干ばつ条件下でのGM品種には、不耕起による土壌水分の一層の保持、希少な水を吸い取る雑草の防除という二つの別の要因もあると主張する。

 この5ヵ月続く州の干ばつは、昨年10月、11月に作付された大豆に甚大な被害を与えている。政府の農村技術支援・普及機関は、州の大豆収量は61%減少、1ha当たり2,007kgから782kgに落ちると推定する。予想収穫量は830万トンから320万トンに落ちる。

 GM大豆は10年ほど前から密輸され始め、正確には分からないが、大豆面積の80%に達した。過去2年、政府は99年に法廷が禁止したGM大豆を暫定的に許可してきた。今年3月に議会を通過した「バイオセキュリティー法」は、国におけるバイオテクノロジーの利用を恒久的に合法化した。この混乱の間に、州の種子企業は市場から駆逐された。干ばつはその復活の希望を与えるが、地域の気候と土壌条件に適する非GM品種に走るだろう大豆農民に供給する十分なストックはない。GM品種が州全体の需要を満たすには3年はかかかり、非GM品種は近年の需要の低迷で当面は不足、州の大豆生産の以前の水準への回復には数年を要し、来期の播種には、農民は干ばつで劣化した自分の種子を使うことになるという。

 政府の食糧安全保障・経済社会開発機関のメンバーでもある南部地域の家族農民連盟指導者は、これは、国の農業開発戦略の再考の機会も提供すると言う。彼によると、干ばつはGM問題だけでなく、モノカルチャーについても大きな教訓を与えた。現在の干ばつの原因の一つ、少なくともその影響の悪化に寄与した要因は、農業機械化、化学物質の過剰な利用を伴い、輸出用の限定された作物に焦点を当てた1970年代に始まった「緑の革命」であると指摘する。このモデルは、広大な森林破壊、湿地の排水、水のふんだんな利用を伴い、エコシステムの均衡を無視したものであった。リオグランデ・ド・スル州を何百km歩いても、森林は見ることができない、一面大豆畑になってしまったと言う。

 当時は「金鉱」に見えたために大豆モノカルチャーに魅せられた小農民は、今や破産した、彼は環境的・社会的持続可能性を醸成する多角化モデルへの変更を唱導する。GM技術は、土地を一握りの所有者に集中させ、小農民を追い出し、貧困化させ、さらに環境も悪化させるモノカルチャー輸出モデルを強化したと指摘する。

 しかし、バリソン氏は、農民が自分に最も便利な品種を選べるように、GM品種の自由販売を擁護する。彼の意見では、南部の大豆農民は、違法な大豆を栽培したときに、「彼らが引き受けたリスクに支払っている」、損失はGMのせいではなく、不適切な種子のせいだ。州営のEmbrapa社も含むいくつかの企業が、除草剤耐性を含むモンサントの遺伝子を合体した高収量GM品種を開発した。ミランダ氏も、議会が承認した形のバイオセキュリティー法が発効すれば、農民による高い需要のために、GM作物が急速に拡大すると見ている。