インド、南部の1州でのBtワタ販売を禁止 害虫防除に効果なし

農業情報研究所(WAPIC)

05.5.7

 APが伝えるところによると、インドの遺伝子操作承認委員会(GEAC)が4日、モンサントとそのインド提携会社のBtワタの南部・アンドラプラデーシュ州での販売を禁止した(Monsanto suffers setback in India as GM cotton varieties banned,AP via Yahoo!,5.4)。このワタは殺虫毒素を出す遺伝子組み換え(GM)品種で、02年3月に承認されたものだが、承認期限が先月切れ、モンサント社がアンドラプラデーシュ州を含む南部・中部6州で承認の更新を申請していた。しかし、同州では害虫防除に有効でないことが判明、6時間半にわたる議論の末、更新を認めないことに決定した。ただし、他の州では引き続き販売を認める。同州政府は、モンサントに対し、このワタを播くことで損害を蒙ったと言う農民への補償も求めた。GEACは4月、過去3年間のBtワタの実績に関する各州のコメントを求めたが、アンドラプラデーシュ州からの報告は満足できるものでなく、更新を拒否せねばならなかったという。

 なお、最近発表されたアンドラプラデーシュ州でのこのBtワタ(Bollgard)栽培の02-05年の成績に関する初めての包括的研究(http://www.ddsindia.com/PDF/BT_Cotton_-_A_three_year_report.pdf)は次のような事実を発見している。

 1)小農民のBtワタの3年間の平均収量は1エーカー(0.4ha)当たりおよそ650kgを維持してきたが、2005年の天水に頼る条件下での収量は535kgにとどまった。同じ農民の非GMワタの2005年の収量はそれを150kg上回った。非GMワタの収量は、10%少ない費用で30%ほど多かったことになる。

 2)Btワタは農薬使用を減らさなかった。Btワタ農民と非GMワタ農民の害虫防除費用は7%しか違わず、害虫防除費用は微小なために、これは栽培総費用では2%の差にしかならない。

 3Btワタは農民に利益をもたらさない。3年間平均の非GMワタ農民の利益は、Btワタ農民の利益を60%も上回った。悲惨な状況に置かれたBtワタ農民は街頭での暴力的抗議行動を展開、種子店の焼き討ち行動にまで出る破目になった。

 4Btワタは栽培費用を減らさない。Bt種子の購入費用は非GM種子の3倍から4倍になるだけでなく、施肥、灌漑、監視のための追加ケアが必要になった。特に天水地域の多くのBt農民は、非Btハイブリッド農民の少なくとも倍の費用を払った。平均では、Bt農民の費用が12%多かった。

 5)Btワタにより特殊な根腐れが広がったらしい。農民は、土壌が非常に悪化するために、Btワタ栽培の後に他の作物を栽培できないと不平を述べている。非GMハイブリッド種を栽培した土壌は他の作物にも非常に優しかった。土壌科学者は直ぐにも研究を始める必要がある。