FAO報告、作物バイテク応用で一部途上国は最先端 食糧安全保障が焦点

農業情報研究所(WAPIC)

05.5.11

 国連食糧農業機関(FAO)が6日、途上国における作物バイオテクノロジーの研究と応用の現状に関する評価報告を発表した(ftp://ftp.fao.org/docrep/fao/008/y5800e/y5800e00.pdf)。これに関するFAOのニュースによると、「いくつかの途上国は、今や十分なバイオテクノロジー計画を持ち、バイテク応用の最先端にあり、大きな研究能力を持つ」、この報告は、「途上国は間もなく、ウィルス抵抗性パパイヤ・スウィートポテト・キャッサバや非生物的ストレス(塩害や干ばつ)に耐えるコメなどの新たな遺伝子組み換え(GM)作物の利用が可能になる」(http://www.fao.org/newsroom/en/news/2005/102236/index.html)。

 このニュースは次のように伝える。

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 食糧安全保障に焦点

 途上国で今までに商品化された大部分のGMOは先進国から取得されたもので、限定された数の形質(主として除草剤耐性と害虫抵抗性)と作物(ワタ、大豆、トウモロコシ)が中心であった。しかし、FAOの評価は、いくつかの途上国がバナナ、キャッサバ、ササゲ、プランテーン、コメ、ソルガムなどの広範な作物、非生物的ストレス耐性や品質などの食糧安全保障に関連した形質に関する研究を行なっていることを明らかにした。

 アルゼンチン、ブラジル、中国、キューバ、エジプト、インド、メキシコ、南アフリカが主導的地位にあり、第二のグループ(注1)は,」通常は枢要な分野での中規模の農業バイテク計画を持つ。他の国の研究能力は比較的限られている。

 FAO研究・技術開発局のAndrea Sonninoは、”我々は途上国の研究活動が食糧安全保障のために重要な問題の一層焦点を当てるように希望する”と述べる。

 注目すべき欠陥

 しかし、研究には注目すべき欠陥がある。例えば、大きな損害が引き起こされているにもかかわらず、線虫類抵抗性の分野ではいかなる研究も報告されていない。他の基本的であるが無視されて問題は収穫後損失にかかわる。

 また、研究は、アフリカ、東欧、ラテンアメリカ、近東の多くの国がGMO技術の利益をフルに享受することを可能にするためには、バイオセーフティー能力の建設が必要であることにも注意する(注2)。

 非GMバイオテクノロジー(注3)に関しては、多くのものが商業規模で利用されているが、その社会・経済的影響を評価するための研究は非常に少ない。報告は、これはすべてのバイオテクノロジーの広範で有効な利用に向けての研究・技術政策と投資のガイドを助けるから、緊急の注目を要する分野であると強調する。

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 なお、この報告は、「バイオテクノロジーは作物・家畜・森林・漁業生産を制限する拘束の多くを解消するのに役立ち得る」と確認、「FAOは、他のパートナーと共に、あり得るリスクと悪影響を最小限にしながら、バイオテクノロジーと各国の必要に合致するその製品の開発・適応・利用の能力を最適化し、食糧安全保障を強化し、生活水準を向上させるように加盟国を助ける用意がある」と、バイテクに対するFAOの立場を鮮明にしている。

 (注1)バングラデシュ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、カメルーン、ケニア、モロッコ、ナイジェリア、チュニジア、ジンバブエ、チリ、コロンビア、コスタリカ、エクアドル、ベネズエラ。

 (注2)途上国におけるGMOの速やかな採用を妨げるその他の要因として、,報告は技術移転の適切なメカニズムの欠如と現在策定されているGMO規制システムの高度な複雑性とコスト、適切な知的所有権保護の欠如と弱体な国家育種計画と種子システムを上げている。

 (注3)特に植物繁殖や分子マーカーにかかわる技術。