西オーストラリア州政府 非GMカノーラにGM物質を検出 高まる賠償責任特別立法の要求

 農業情報研究所

05.8.10

 オーストラリアのメディアが伝えるところによると、西オーストラリア(WA)政府が非遺伝子組み換え(GM)カノーラ(ナタネ)に低レベルのGMカノーラを検出したと確認した。WAのキム・チャンス農相の報道官が、検査はGM物質陽性を示したが、検査標本はさらなる検査のために海外に送られた、一層詳細な検査の結果が確認されるまで、これ以上詳しいことは発表できないと語ったという(More GM contamination found in crops,smh.com,8.8; http://smh.com.au/articles/2005/08/08/1123353257322.html)。

 6月のオーストラリア大麦ボードの検査でも、ビクトリアのカノーラ種子の日本向け輸出荷にGM物質が発見されている。バイエル・クロップサイエンス社が開発したGMカノーラ・Topas 19/2による汚染であったが、WAでの汚染も同じGMカノーラによるものと見られている。

 これを受け、グリーンピース・オーストラリアの活動家は、これはオーストラリアがかつて経験したことのない最も深刻な遺伝子汚染事故であり、州政府はオーストラリアのGMフリーのステータスを護るために直ちに行動を起こさねばならないと語ったという。西オーストラリアとビクトリアの政府は厳格な検査を導入したが、ニューサウス・ウェールズとサウス・オーストラリアの政府はいかなる対応もしていない。

 WAのチャンス農相は、GM汚染責任を律する国レベルの立法が望ましいと言う。彼は、今回の検査は予備的検査で、最終的結果が9月初めに出るまではWAのGMフリーのステータスが脅かされていると断言するのは危険としながら、”憂慮する農民ネットワーク(Network of Concerned Farmers;NCF)”が厳格な賠償責任法を強く求めたきたことは承知している、これは真面目に考える必要があると語ったという。

 NCFは、ますます多くの市場がGM種子を受け入れなくなっているから、GMフリーのステータスが失われれば農民はやっていけなくなると恐れ、かねてGM汚染が起きた場合に適用される特別の賠償責任立法を要求してきた。今回の発見を受け、1万の種子中のたった一つが陽性になっただけで、偽陽性の可能性があるならオーストラリアでは利用できない一層進歩した方法で検査する必要がある、汚染が確認された段階で汚染源を見つけ出し、それを排除し、汚染を引き起こした者が誰であろうと請求書を送りつけると発表した。それは、一般法ではGM汚染が引き起こす経済的損失の賠償責任は扱えない、政府は、汚染者負担を確保する厳格な損害賠償責任法を導入せねばならないと強調する(GM contamination found in WA - farmers insist on recall,8.7;http://www.non-gm-farmers.com/news_details.asp?ID=2322)。

 オーストラリア農業・漁業・林業省は2003年9月、GMOに関連した賠償責任に特別立法を通して取り組んでいる主要国は今のところドイツとオーストリアだけで、現段階では既存制度が不適切という証拠も経験もない、農業生産における遺伝子技術がもたらすリスクは、基本的には政府の継続的監視を伴う産業の自主規制によって取り扱うべきだとする報告書を出している(Liability Issues Associated with GM Crops in Australia)。1996年以来のGMワタの商業栽培をめぐる状況だけを考慮したこの結論が現在でも維持できるかどうか、改めて検討せねばならない時期にきているようだ。