GMトウモロコシ・大豆のアレルギー誘発性は発見されずーポルトガルの新研究

農業情報研究所

05.8.11

  遺伝子組み換え(GM)食品の安全性をめぐる最大の関心事はアレルギー誘発性の問題であるが、ポルトガルの研究者が、EUが承認したGMトウモロコシ(Bt11, Bt176, T25, MON810)とラウンドアップ・レディー大豆に含まれるGM物質にアレルギー誘発性は発見されなかったという試験結果を発表した。これらはアレルギー誘発性に関するかぎり安全に見えるけれども、安全と結論するためには、試験を他の国の人を含む一層多くの人々に拡張せなばならないという(Batista R et al.,Lack of detectable allergenicity of transgenic maize and soya samples,Journal of Allergy and Clinical Immunology, August 2005, 116;http://download.journals.elsevierhealth.com/pdfs/journals/0091-6749/PIIS0091674905007244.pdf)。

 研究者は、これらのトウモロコシと大豆の組み換え遺伝子が過去にアレルギーを引き起こしたことのないソースから得られたものであることにとりわけ注意した。また、IgE抗体が媒介するアレルギー反応には前もっての感作性が必要だから、被験者が今までに食べたトウモロコシ及び大豆由来の製品を知るための食事調査も行った。これら106人の被験者(アレルギー体質をもつ男性48人、女性58人)の年齢は1歳から41歳まで、平均年齢は12.4歳だった。

 これら被験者について、GMトウモロコシ・大豆から抽出した蛋白質を皮膚に突き刺す試験が行われた。また、別の二つグループー食品・吸入因子アレルギーをもつ子供、喘息‐鼻炎をもつ人ーについて、非GMトウモロコシ・大豆による試験も行った。これら被験者の漿液(血清)をIgE免疫ブロット反応試験にかけたところ、GMか非GMかで異なる反応を示した者はいなかった。また、アレルギー体質をもつ誰についても、純粋のGM蛋白質に対するIgE抗体が検出されなかった。

 この試験結果に基づき、研究者は、この研究に使用されたGMトウモロコシ・大豆はアレルギー誘発性に関するかぎり安全に見えると結論した。ただし、研究ははるかに多数の人々、また他の国のグループにも拡張されねばならないと考えている。また、GM食品市販後の特別のIgE抗体サーベイランスがアレルギー誘発性を推定するための重要な戦略をなすべきだと言う。

 稀有な人体実験にもかかわらず、安全確認とまではいかないようだ。研究の拡張?しかし、こんな試験に応じる人がどれほどいるのだろうか。何も気にせず毎日食べている国の人々の抗体サーベイランスが結論への早道か。しかし、そんな国がこんな戦略を採用する見込みはない。我が国国民は毎日食べているが何の問題もないと、飢餓に苦しむ国に売り込むだけだ。