花粉症緩和GM米、「40%が買ってみたい」 薬剤生産食用作物は許されない

農業情報研究所

05.8.20

 本日付の日本農業新聞によると、民間調査会社・インフォプラントによる20歳以上女性1000人に対するインターネット市場調査で、遺伝子組み換え(GM)原料を使った食品について、72%が「特性によっては買ってみたい」と答えたという。「遺伝子組み換えでない」の任意表示ができるGM物質の混入率が5%未満であることを知らなかった者は95%にのぼったというから、GM食品に関する基本的知識さえ多くの国民に浸透していないようだ。とくに気になるのは、”安全性や健康など特性によってはGM食品を「買ってみたい」人が多く、「花粉症を緩和できる米」などについても40%が「買ってみたい」と答えた”という点だ。

 薬剤成分を生産し、直接食用に供されるGM作物は薬そのものなのだから、通常の薬品の処方と同様、厳密に定められた量の薬剤成分を正確に・安定的に生産するものでなければならない。今のところ、GM技術はそれほど正確なものではない。実験室でそれができたとしても、実際の栽培でどこまで再現できるかわからない。それができたとしても、消費者が直接食べる以上、過剰摂取による薬害が起きる可能性は排除できない、というよりその可能性は大いに高い。栽培・流通の過程で通常食品に混入すれば、消費者はそうとは知らずに無用な、あるいは薬害もありうる食品を食べることになる。

 米国においてさえ、こういうGM製品の通常食品への混入率はゼロでなければならない。これを実現するのはほとんど不可能に近く、主要食品業界団体・企業は、このような作物の商業栽培導入を断固阻止する構えだ。実験を行っている企業は多数あるが、商業栽培の見込みは立っていない。

 それなのに40%もの人が花粉症緩和米を食べてみたいと言う。何とかして消費者に取り込みたいと模索する開発者の宣伝文句をマスコミがそのまま伝えるだけで、薬剤生産作物をめぐるこのような問題には一切触れないからであろう。

 薬剤成分生産作物だけでなく、消費者を惹きつける栄養成分改変GM作物についても、その遺伝子組み換え工程は除草剤耐性・害虫抵抗性の”第一世代”GM作物よりはるかに複雑になり、”予期されない”リスクが大きく増える。このような問題は一切隠しておいて、”効用”のみが喧伝される。

 このままでは、消費者は将来、GM食品由来の薬害や健康障害に悩まされることになるかもしれない。筆者は、少なくとも消費者が直接に口に入れる薬剤成分生産作物は、絶対に許されるべきものではないと考えている。