米国国際開発庁 途上国へのGM作物売り込みプロジェクト

農業情報研究所

05.8.31

 インド紙によると、米国国際開発庁(USAID)が途上国に遺伝子組み換え(GM)作物を売り込むプロジェクトを推進している。USAIDが400億ドルを投じ、コーネル大学が主導するこの農業バイオテクノロジー支援プロジェクトU(ABSP-U)は、他の伝統的アプローチを補完するものとして、GM作物の開発と商品化に焦点を当てている。このプロジェクトにかかわるミシガン州立大学、バージニア工科大学ほか、インドのMahyco社(モンサント社の関連会社)、Nunhems Seeds社、Sathguru Management社、国際農業研究協議グループ(CGIAR)などの様々な国の地域パートナーで構成されるコンソーシアムは、アフリカ、インドネシア、インド、バングラデシュ、フィリピンにおける食糧安全保障、栄養、環境の改善を提案しているという(USAID Project To Promote GM Crops,financialexpress.com,9.29
http://www.financialexpress.com/fe_full_story.php?content_id=100724)。

 プロジェクトの狙いは、技術開発、知的財産権、マーケッティングのような活動を統合する各地域の各作物の製品商品化パッケージを開発することにある。それは、長期的には農業産出の増加、農家所得の改善、公衆のGM作物受け入れ姿勢の改善につながるだろうという。

 Sathguru によると、このプロジェクトは、USAIDのバイオセーフティーシステム・プログラムと称する特別のシステムによるバイオセーフティー規制規準に従う安全な農業バイオテクノロジーを推進するUSAIDの別のイニシアティブを支援することになる。インドでは、シンクイガ抵抗性ナス、干ばつ・塩害耐性イネ、タバコ条斑ウイルス抵抗性落花生とヒマワリ、葉枯病抵抗性ジャガイモにかかわる4つのプロジェクトが採択された。

 すべてのプロジェクトは2007年までに商品化されると期待されている。カルナタカの農業科学大学は、既にMahycoからのシンクイガ抵抗性ナスの種子を戻し交配した。インドと中国の生産が世界の生産の84%を占めるが、シンクイガのために54%から70%の収穫ロスがあるという。

 ニューデリーの科学・技術・エコロジー研究財団の創設者であるバンダナ・シバは、この記事が出たと同じ29日のヒンドゥ紙で2004年種子法を、その狙いは農民が自身の種子を利用することをやめさせることにあると批判した。彼女は、伝統的種子品種を保存する農民を犯罪者扱いにするこの法は、欠陥のある種子やGM種子による遺伝子汚染に関する種子企業の規制に失敗する、農民が信頼でき、高い価値をもつ種子の自身の伝統的品種を持つかぎり、特許独占体制は確立できないと言う(Vandana Shiva flays Seed Act,The Hindu Business,8.29)。

 このような抵抗も、官民一体となった米国のGM作物売り込み戦略の前に蹴散らされるのだろうか。アフリカにしても、インドにしても、政府や研究者は、GM技術の現状を精査することを忘れ、GM技術は食糧安全保障、栄養、環境の改善すると単純に思い込む傾向が強いようだ(Scientists Cautious About Biotechnology,Mmegi/The Reporter via allAfrica.com,8.25:http://allafrica.com/stories/200508250585.htm;GM Crops: the True Story,Ghanaian Chroniclel via allAfrica.com,8.25:http://allafrica.com/stories/200508250499.html)。