フランスで1000ha以上のGMトウモロコシ栽培 早急な共存措置制定を迫る

農業情報研究所

05.9.6

 フランス・フィガロ紙が6日、フランス農民が今年、遺伝子組み換え(GM)トウモロコシを1000ha以上栽培したと暴露した。商業栽培の事実を隠してきた農業省は500haに足りない面積での栽培を認めたが、実際の栽培面積は1000haを超えるだろうという。

  OGM : déjà un millier d'hectares en France,Le Figaro,9.6
   http://www.lefigaro.fr/sciences/20050906.FIG0248.html?100237

 フランスは、GM作物商業栽培の導入に備えてEUが要求する「共存措置」の策定をためらってきた。従って、農家による商業栽培導入の申告義務もなく、実際の栽培面積は農業省も把握できない。そればかりか、一般作物の汚染リスクの統御措置もない。かといって、EUで一旦承認されたGMトウモロコシの栽培を国が禁止する権限もない。

 GHMフリー運動が高揚、農民同盟等による実験作物破壊運動も続く現状からすれば、フランスにおけるGM作物商業栽培は存在しないも同然と考えるのが当たり前であろう。実際、昨年の栽培面積は17.5haに過ぎなかったという。共存措置の差し迫った必要性も考えられなかった。強制力をもたないGMフリー宣言は完全に虚を衝かれたということができる。

 大部分は南西部ーオード、ジェール、オート−ガロンヌ、ランド、ロット・エ・ガロンヌ、タルン、タルン・エ・ガロンヌの諸県ーでの栽培で、種子はGMトウモロコシを大規模に栽培してきたスペイン(今年は8万ha)からの輸入品という。申告のあった500haほどの20%はトウモロコシ生産者協会によるバイテク栽培付随計画によるものので、厳密に商業目的の栽培が40%を占める。生産物は動物飼料として販売されるという(EU新規則では、GM飼料の表示義務が課されたが、それによって飼育された動物の肉や乳・乳製品には表示義務はない)。

 多数の共存計画を追求してきた農業会議所全国会議も、多くの試験栽培を行ってきたパイオニア、デュポンなどの企業も沈黙を護っている。しかし、政府は早急な共存措置の制定を迫られよう。フィガロ紙は、今年7月にスペイン新政府が強化した措置がモデルとして役立つだろうという。

 La réglementation espagnole servira de modèle,Le Figaro,9.6
 http://www.lefigaro.fr/sciences/20050906.FIG0242.html

 スペイン政府は7月19日、アズナール前政権のないにも等しい共存措置を改めた。それによると、GM作物栽培を望む農民は、栽培する品種と導入された遺伝子を明確にして、栽培1ヵ月前に当局に知らせねばならない。農民は播種の準備、圃場の監視、収穫物保存に関する特別の規則に従わねばならない。非GMトウモロコシ栽培地から50mの距離を取らねばならず、GMOと表示された四方の緩衝区域に非GM作物を植え、播種期も非GM作物と開花期が重ならないようにズラさねばならない。また、害虫抵抗性GMトウモロコシについては、害虫の抵抗性発達を防ぐために、GMトウモロコシ作付地の20%は非GMトウモロコシを植えねばならない。

 当該品種が汚染源となったときには、この品種は国家登録を抹消される。地域当局はこれらの措置が順守されているかどうか、監視の任務を負う。

 EUは表示を免れるGMO最大混入率を0.9%としたが、ドイツはGM作物栽培を禁止するに等しい0.1%の上限を設けた。フランスはこのような選択はしそうもない。