中国 ”世界最先端”の害虫抵抗性・増収GMワタを承認 拍車がかかるバイテク開発

農業情報研究所(WAPIC)

05.9.21

  China Daily紙が伝えるところによると、中国政府が、ワタの主要害虫であるワタキバガに抵抗性をもち、同時に収量を25%増加させる世界初の遺伝子組み換え(GM)Btワタの商品化を承認した。これは”中国Btワタの父”と言われる Guo Sanduが率いる中国農業科学院の研究チームが1999年に始まった研究により開発した”Yinmian 2”という品種で、農業部によると、国家栽培植物種評価委員会の承認で商品化へのゴーサインが出たという。

 New cotton strain to raise output by 25%,China Daily,9.19
 http://www.chinadaily.com.cn/english/doc/2005-09/19/content_478842.htm

 この報道によると、承認を得たのは害虫抵抗性遺伝子をもつ3系統(雄性不稔、維持、稔性回復)のハイブリッド種で、栽培に適する333万haの土地に栽培されると、理論的には年に100万トンの増収をもたらす。農業部のFan Xiaojian副部長によると、この量は慣行品種ならば中国の主要ワタ栽培地である長江デルタの全ワタ栽培面積に等しい66万6600haでの収穫量に相当する。穀作とワタ作の間の土地配分をめぐる争いを和らげることもできようと言う。

 研究者によると、中国科学者は、雑種強勢を維持し・増幅し、高品質と高収量につながるハイブリッド・ワタ品種を確保するために、遺伝子操作及び慣行育種を通してこれらの系統を操作してきた。害虫抵抗性の有効性は90%以上という。

 研究者は、米国は1948年に”3系統ハイブリッド・ワタ”の研究を始めたが 高収量を確保するのに失敗、単に害虫抵抗性のGMワタの開発にとどまっている、インドのような他の主要ワタ作国は、大量の労力を要する非効率的な育種方法を通してハイブリッド・ワタを開発していると言う。

 ”ハイブリッド・ライス”の父と言われる袁隆平氏は、1980年代、90年代にハイブリッド・ワタ育種の視察をするために米国とインドを訪ねているが、中国の3系統害虫抵抗性ハイブリッド・ワタは世界最先端を行くものと信じる、「初期段階とはいえ、ワタ生産を25%増やすことができる」、ハイブリッド・ライスはコメ収量を20%増加させたが、これらのワタは、将来、30%増加させるだろうと語ったという。

 彼は、農業部、科学技術部や国家開発改革委員会に、バイテク投資を強化し、農民が恩恵に浴するようにこの技術を全国的に広めるように要請した。

 中国のバイテク推進に一層拍車がかかりそうだ。

 9月15日、中国とEUは、北京とブリュッセルで同時に”知識ベースのバイオエコノミー”と題する会合を開いた(European Commission:EU and China link up to promote the knowledge-based bio-economy)。共に、バイテクが地域・国の経済の生命線を握ると言う。

 北京におけるこの会合の開会演説で、徐冠華科学技術部長は、バイオテクノロジーは来るべき15年で中国で最も急成長する産業になると述べた(China Daily,9.15http://www.chinadaily.com.cn/english/doc/2005-09/15/content_477899.htm)。

 彼は、バイオテクノロジーが2006年から2020年までを通じての国の中長期科学技術開発戦略の重点になる、どれだけ投資するとは言えないが、投資は大いに拡大されると言う。

 彼によると、過去数十年の間、国はバイテク開発に18億ドルを投資してきた。今後長期にわたって独創的開発を刺激することを優先する。重点は下のゲノミックス、プロテミクス、GM食品、ワクチン開発、伝統的中国医薬品の近代化に置かれることになろう。

 他の先進国に比べ、中国のバイテク特許は少なくい。中国科学院の昨年の調査では、バイテク特許の申請数は、米国、EU、日本に遅れを取り、4番目だ。バイテクのプロを訓練し、多数の先進的研究所を設ける一層の努力が必要だと言う。

  この記事によると、中国には現在、200の政府資金によるバイテク研究に関する研究所と500の関連企業がある。