害虫抵抗性GMエンドウがマウスにアレルギー反応ーオーストラリア研究機関が発見

農業情報研究所(WAPIC)

05.10.22

 オーストラリアの英連邦科学産業研究機関(CRIRO)が、害虫(ゾウムシ)抵抗性の遺伝子組み換え(GM)エンドウがマウスのアレルギー反応を引き起こしたことを明らかにした。 このエンドウは、インゲン豆((Phaseolus vulgaris) から採ったゾウムシを殺す蛋白質を作る遺伝子を組み込まれたものだ。この研究結果は、今週のJournal of Agricultural and Food Chemistryに発表された。

 http://www.pi.csiro.au/GMpeas/GMpeas.htm

 GM作物の現実的リスクを示すこの発見は、ブラジルナッツの遺伝子を組み込まれた大豆にアレルゲンが移行したという有名な発見以来のものだ。 しかも、ブラジルナッツの場合と異なり、この蛋白質自体は、マウスや人間にアレルギー反応を起こすものではない。遺伝子操作が新たなアレルゲンを生み出したと考えることができる。研究チームは、この蛋白質が豆に発現するときには微妙に構造を変えることを発見した。この構造変化がマウスに予期されない免疫影響を与えたと考えられるという。

 これはGM食品の一層厳格なリスク評価を要請する。この発見を受けたCSIROの報道発表によると、CSIRO植物産業副主任のヒギンズ博士は、この発見がGM植物のケース・バイ・ケースの評価の有効性とGM作物導入をめぐる決定において科学が演じる役割の重要性を立証するものだと言う。CSIROは、500万ドルを支出、10年にわたって続けてきたこのGMエンドウの研究開発の放棄を決めた。

 http://www.csiro.au/index.asp?type=mediaRelease&id=212GM&style=mediaRelease

 インゲン豆は、ゾウムシによる澱粉消化を助ける酵素・アルファ-アミラーゼの活性を阻害する蛋白質を含む。研究者は、ゾウムシがこの蛋白質を食べても消化できず、死滅することを期待してこのGMエンドウを開発してきた。有害性が発見される前に行われた実験では、ゾウムシ抵抗性は完璧だったという。

 しかし、その後、マウスを使って免疫影響を調べた。これを食べたマウスには、この蛋白質に特有の抗体が生み出された。その後、これらのマウスを、血液への注入か、気道に入れることを通して精製された蛋白質に曝した。血液に注入されたマウスは過敏な皮膚反応を示し、気道がこの蛋白質に曝されたマウスは気道に炎症を起こし、肺にも軽いダメージが見られた。また、蛋白質が調理により変性するかどうかを調べるために生と調理済みの豆で試したが、結果はどちらの場合も同じだった。

 研究チームは、さらに、蛋白質がインゲンとエンドウに発現するときにその分子構造が僅かに違うことも発見した。これは、二つの豆における蛋白質を生成する方法、特に糖鎖形成の過程が違うために起きると考えられるという。研究者は、これは 別の遺伝子を組み込まれた他の植物でも起き得るから、新規GM食品は、個別の健康影響評価が慎重になされねばならないと言う。

 この発見は、GM食品の安全性評価のためには包括的で完全な検査が行われねばならないことを、改めて浮き彫りにする。