EU医薬品機関 GM動物から生産される薬品を承認せず(速報)

農業情報研究所(WAPIC)

06.2.24

 ニューヨーク・タイムズ紙の報道によると、EUのヨーロッパ医薬品庁(EMA)がGTC Biotherapeutics社の開発した遺伝子組み換え(GM)動物から生産される最初の薬品の承認を断った。GTCやその他の企業は、牛、山羊などの乳中に薬剤として利用される人間の蛋白質を生成させるために、これらの動物に人間の遺伝子を投入してきた。GM動物による薬剤生産は、バイテク企業とGM技術の唱道者が大きな期待をかける分野のひとつである。EUが承認しなかったことは、少なくとも一時的には、これらの企業や唱道者に対する重大な打撃となる。GTCの株価は40%下落した。GTCはこの決定に控訴するという。

 EMAが承認しなかったのは、臨床試験を受けた患者が余りに少ないことを理由に諮問委員会が承認に反対したためという。また、試験された薬品は、試験が始まる前に濾過が行われているために、販売されることになる薬品と正確に同じ方法で作られたものではないともいう。

 Europe Rejects Genetically Engineered Drug,NY,,2.24
 http://www.nytimes.com/2006/02/24/business/worldbusiness/24drug.html

 追記(2.25)

 この問題については、24日付のネイチャー・ニュースが詳しく報じているので、補足する。

 Drug from GM animal gets thumbs down,news@nature,2.24
 http://www.nature.com/news/2006/060220/full/060220-17.html

 それによると、この薬は、血液凝固反応を制御する人間の活性アンチトロンビン遺伝子を欠き、血栓のリスクが高い人のために設計されたもので、GTCはその開発に15年を費やし、ATryn.の名前での販売の承認をEMEAに申請した。GTCは、この遺伝子を山羊に付加することで、山羊の乳にこの抗血栓剤を生成させようと試みた。それ自体は難しいことではなかったが、蛋白質の精製、臨床試験に十分なほどの精製は難しかったという。

 EMEAは、GTCに12人の患者による試験を勧告したが、5人の患者からの証拠しか提出されなかったことに加え、販売される薬が試験には含まれなかった追加フィルトレイションのステップを踏むであろうこと、GTCは患者がATrynに反応して抗体を発達させるかどうかを評価する研究をほとんど行っていないことを理由に、その承認を拒否した。

 ただ、承認を待っている薬はこれだけではない。オランダのバイテク企業・Pharmingが、GM牛の乳に生成されるラクトフェリンと呼ばれる抗菌剤の承認を米国食品医薬局(FDA)に申請している。会社は、人間のラクトフェリンが健康増進のために食品に添加されるもので、薬よりも承認に向けてのハードルは低いことから、年末までには承認されると信じているという。