欧州委 GMO政策の科学的一貫性と透明性の改善案を支持 実効は?

農業情報研究所(WAPIC)

06.4.13

 欧州委員会が12日、遺伝子組み換え体(GMO)に関する決定の科学的一貫性と透明性を改善するためのキプリアヌ保健・消費者保護担当委員とディマス環境担当委員の提案を支持すると発表した。提案された措置は、既存の法的枠組を変えることなく、また許可手続の不当な遅延を避けつつ、EUの決定が人間の健康と環境の一層高度な保護を提供する科学的評価に基づくことを加盟国、関係者、一般市民に再保証する実行上の改善を目指すという。

 欧州委員会は、EUは過去5年間、GM食品・飼料・作物の販売と生産を規制する厳格なシステムを設けてきた、この規制システムは、ケース・バイ・ケースの科学的評価に従ってGMOのEU市場での販売を個別に許可する世界で最も厳格なシステムであると言う。

 それにもかかわらず、多くの消費者・環境団体は常に欧州食品安全機関(EFSA)によるEUレベルのリスク評価に疑問を唱え、EFSAのリスク評価と加盟国リスク評価機関の評価が割れることも常だ。新規承認モラトリアム解除後に承認されたGMOは、すべて加盟国当局者で構成される委員会や加盟国閣僚で構成される理事会で承認されたものではなく、欧州委員会が職権で承認したものだ。

 今回の措置は、市民や加盟国の要求に圧されたもので、欧州委員会の自発的意思によるものではない。欧州委員会は、これは委員会内部の反省の結果ではなく、加盟国と関係者の議論によるものだ、今後、この分野のEU政策で一層のコンセンサスと透明性を築くことを目標に、理事会において加盟国と、またEFSAとこの提案を議論すると言う。

 提案された措置の概要は次のようなものだ。

 科学的評価の局面で、

 ・科学的意見の加盟国との違いを解消するために、EFSAに国家科学機関と一層十全な連携を保つように要請する。

 ・国家当局の科学的反対を排除するために、EFSAに対し、個別の申請に関する意見において一層詳細な正当化理由を提供するように要請する。

 ・欧州委員会は、EFSAの評価が実行される法的枠組を明記する基本法で予見される規制権限を完全に行使する。

 ・EFSAに対し、安全性を証明する科学的研究を実施するために申請者がいかなる特定のプロトコルを使用すべきかを明確にするように要請する。

 ・申請者とEFSAは、GMOの販売のためのリスク評価において、あり得る長期的影響と生物多様性問題に一層明晰に取り組むように要請される。

 決定の局面で、

 ・欧州委員会は、販売許可の決定案にケース・バイ・ケースで追加的リスク管理措置を導入することで、リスク評価で確認されたか、加盟国が立証した特定のリスクに取り組む。

 ・欧州委員会は、また、一加盟国の観察がEFSAの意見が適切にか完全に取り上げていない新たな重要な科学的問題を提起するを考える場合には、手続を停止し、問題を一層の考察に付することもあり得る。

 これで、市民や加盟国が納得するだろうか。 市民が納得するためには、科学的に不確実で定量もできないリスクを切って棄てるリスク評価の仕組を根本的に改めることが不可欠だ。法的枠組を変えることなく、そんなことが可能だろうか。