Btトウモロコシへの害虫の抵抗性発達抑制戦略の有効性に疑念ーフランスの新研究

農業情報研究所(WAPIC)

06.6.2

 フランスの研究者が害虫抵抗性遺伝子組み換え(GM)Btトウモロコシの栽培で害虫に抵抗性が発達するのを抑える米国で採用されてきた戦略の有効性に疑問を呈する研究を発表した。

 米国で採用されてきた戦略は、Btトウモロコシ栽培地面積の20%に相当する面積の通常トウモロコシで構成される”避難地”を設けるというものだ。ここに保存される無垢の害虫とBtトウモロコシ畑からやってくる抵抗性をもつ害虫を交雑させることで抵抗性害虫の遺伝形質を希釈し、その子孫のBt毒に対する感受性を維持しようとするわけだ。

 しかし、このフランス研究者は、この戦略の有効性は、これらの害虫がいつ、どこで交尾するかを知らなければ正確に評価できないと考えた。そこで、現場の主要な鱗翅目害虫に標識を付け、再捕獲する方法を使ってこれを調べた。その結果、交尾は害虫が生まれた圃場で非常に頻繁に起き、避難地の害虫とBtトウモロコシ圃場から移動してきた害虫との交尾はほとんどないことが分かった。従って、抵抗性害虫の遺伝形質は希釈されず、Btトウモロコシ圃場の雄雌の交尾で個体の抵抗性は強化され続けるだろうということだ。

 とはいえ、米国では害虫抵抗性の発達が見られないのも事実だ。それは何故か。研究者まだまだ研究が必要と言うが、この発見は、例えば輪作のあり方などに依存する一定の状況の下でこの戦略の有効性が減少する可能性を示唆すると言う。

 この研究は、5月30日発行のPLoS Biology誌に発表された。

 Denis Bourguet et al,Resistance Evolution to Bt Crops: Predispersal Mating of European Corn Borers,PLoS Biology,Volume 4 | Issue 6 | JUNE 2006
  http://biology.plosjournals.org/perlserv?request=get-document&doi=10.1371/journal.pbio.0040181