除草剤耐性GM草が実験地から拡散 野生種駆逐、”スーパー雑草”の急速な拡散の恐れも

農業情報研究所(WAPIC)

06.8.14

  ネイチャー・ニュースによると、オレゴン州コーバリスで米国環境保護庁(EPA)のために研究をしている研究者がゴルフコースのために育成された除草剤耐性遺伝子組み換え(GM)草本品種が実験圃場から逸出していることを発見、エコロジストが米国北西部の野生草地種生息地を破壊する恐れがあると警告している。また、この草の増殖能力の強さからすると、他の草に除草剤耐性遺伝子を移転させる可能性もあるという。除草剤耐性作物の商業栽培がもたらした”スーパー雑草”の自生が、実験によってさえたちまち全米各地に広がる恐れもある。

 Escaped GM grass could spread bad news,news@nature,8.11
 http://www.nature.com/news/2006/060807/full/060807-17.html

 研究チームは、米国農務省(USDA)が利用を未だ承認していないクリーピングベントグラスと呼ばれるGM植物の実験圃場からほぼ5km以内の草地地域を研究した。調査された55のサイトのうちの6つが実験中のGM]植物の”子孫”を含んでいた。この品種は実験地から最大3.8km離れた場所の野生種のなかに検出されたといい、研究者は種子と花粉が風により実験地から拡散したと信じている。

 エコロジストは、植物のGM成分自体が問題を引き起こすことはなかろうが、もし定着すると頑強な品種が多くの原生近縁種に置き換わる恐れがあると言う。しかし、EPAの担当官は、問題のスケールは未だ分からない、「それは野生地のなかに永存する可能性はあるが、他の種に対して優勢とは必ずしも予想されない」と強調している。

 とはいえ、これは除草剤・グリホサート耐性品種で、他の草が生育し、除草剤で管理されている地域から根絶することは難しいだろう。コロラドの国立侵入種研究所のエコロジスト・トム・ストールグレン氏がそれ以上に恐れるのは、この草が他の国内品種に対して持つかもしれない影響だ。”芝生を作る”草と言われるこのタイプの植物は、広く拡散する種子と花粉を通して雄性生殖で増えるとともに、一層多くの新芽を出現させる深い根のマットを形成することで無性生殖によっても増えることから、急速に広がることができる。

 ベントグラスが野生地で除草剤に遭遇することはありそうもなく、従ってGMであるかどうかは必ずしも問題にならないだろうが、「芝生を作る草は他の種を押し退けてしまう可能性がある。それは雄性生殖で増殖する必要がない。希少種、あるいは国立公園に打撃を与える可能性がある」と言う。

 彼は、強健な草の侵入を止めるには数十キロメートルの距離では不十分だとも言う。草は食料作物と異なり、何年も生き残る永年性植物だ。さらに、種子は非常に細かく、風により、あるいは動物・人・車などに付いて容易に運ばれる。米国の園芸家や球場等管理者のための種子の70%を生産するオレゴンの草種子産業は、実験サイトからおよそ90km離れたウィラメット・ヴァレーに本拠を置く。もしこのベントグラスがここに到達すると、排除は非常に難しい。

 彼によると、草の大規模侵入例は以前にもある。1998年、ケンタッキー・ブルーグラスが、サウスダコタのウインドケイブ・ナショナルパークの多様な種類の草を一掃してしまった。それは今や国のあらゆる州に広がっている。ベントグラスの盛んな拡散能力からすると、交雑を通して他の草にグリホサート耐性遺伝子を移転させることもあり得るという。

 除草剤耐性作物の商業栽培の拡大が、除草剤の効かない”スーパー雑草”の自生をもたらしていることは既に知られている。彼の心配が当たっているとすれば、除草剤耐性の草は、実験段階においてさえ、”スーパー雑草”の全米への拡散をもたらすことになる。農家と環境に、取り返しのつかない大災厄をもたらす恐れがあるということだ。