南部5州の広範な地域の米がGM汚染 米国最大の米販売業者が明かす

農業情報研究所(WAPIC)

06.8.23

  米国で販売されている長粒米の中にバイエル社の販売未承認除草剤耐性遺伝子組み換え(GM)米(LLRICE601)が検出されたことを先日伝えたが(米国:販売米種子に販売未承認のGM米検出 FDA、USDAは安全を強調,06.8.19)、これを発表した食品医薬局(FDA)も農務省(USDA)も、GM米のサンプルがどこで採集されたものか、汚染がどこで、どのように起きたのかなど、詳しいことはまったく明らかにしていなかった。

 18日の記者会見で、報道員は、このサンプルが「どこから来たのか、どの州の営業倉庫、国のどの地域から来たのか」、「このサンプルがルイジアナで栽培され、ライスランドが保管している米から来たという噂がある。これに対する長官のコメントは?」、「この汚染が国の様々な米栽培地域で起きたのか、それともルイジアナとカリフォルニアではない一つに地域だけで起きたのかどうか知りたい」などと質した。しかし、ジョハンズ農務長官はまったく答え(られ?)なかった。

 USDA:Transcript Of Remarks By Agriculture Secretary Mike Johanns and Dr. Robert Brackett, Director of the Food and Drug Administration's Center for Food Safety and Applied Nutrition - Washington D.C. - August 18, 2006
  http://www.usda.gov/wps/portal/!ut/p/_s.7_0_A/7_0_1OB?contentidonly=true&contentid=2006/08/0308.xml

 ところが、この問題にある程度答える記事を22日付けのニューヨーク・タイムズ紙が発表した。

 Unapproved Rice Strain Found in Wide Area,The New York Times,8.22

 それによると、米国最大の米販売業者である農民所有協同組合・ライスランドが21日、南部の米栽培地域の広範な地域の販売米への未承認のGM米の混入が発見されたことを明らかにした。ライスランドはアーカンソー・ミズーリ・ミシシッピ・ルイジアナ・テキサスの5州からのサンプルにGM形質を発見した、「この陽性の結果は地理的にはチリヂリ、無規則的だった」と言う。

 ライスランドは、その米の中にGM製品が存在することが一輸出相手により1月に発見されたと言う。GM米は米国では商業栽培されていないから、当初、少量のGMトウモロコシやその他の作物が、恐らくは輸送手段の共用を通じて米に混じったと考えた。しかし、5月、いくつかの穀物貯蔵サイトから米のサンプルを集め、バイエルの形質に陽性であることを発見した。そこでこれをバイエルに伝え、バイエルがこの発見を確認することになった。汚染レベルは1万粒に6粒だった。バイエルがこれを7月31日になって政府に報告したのだという。

 しかし、これによっても、2001年にフィールド実験を終えた米がどのようにして2005年の収穫米に入り込んだのかは分からない。米国米生産者協会のロバーツ会長は、「これがどこで始まったのか、どのようにして始まったのか、どのようにして広がったのかを知る必要がある」、農務省は迅速に行動し、「認証と検査に関する何らかの政策を発表せねばならない」と言う。

 厚生労働省は、在日米国大使館を通じて、我が国で安全性審査が終了していない米が対日輸出されることがないよう管理の徹底、LLRICE601の混入に係る詳細な経緯、流通状況、検査方法等について情報提供を米国に要請した。また、LLRICE601の検査が実施可能となるまでの間、米国産米の長粒種については輸入しないよう輸入者への指導を検疫所に指示、国家貿易以外で既に輸入された米国産米については、長粒種であるか否かの確認と長粒種の場合には検査が実施可能となるまでの間、加工・販売を行わないよう都道府県等を通じて指導するという。

 安全性未審査の米国産遺伝子組換え米(長粒種)の混入について(06.8.19)

 しかし、この状況では米国はこの要請に簡単には応えられそうもない。また、長粒米だけが問題とされているが、米国で栽培される米の多くが長粒種だから、たまたまその汚染が発見されただけかもしれない。汚染の広範な広がりを考えると、中粒種を主体とするカリフォルニアでも汚染が起きている可能性 を否定できない。長粒種に限らない米国産米の一層の調査も必要ではなかろうか。