EU閣僚 バイエル社のGMナタネ承認で決定に至らず 欧州委が承認へ

農業情報研究所(WAPIC)

06.9.19

 18日に開かれたEU農相理事会で、欧州委員会がを要請していた遺伝子組み換え(GM)採油用ナタネの栽培を除くすべての利用と食品への利用の承認の可否を決定できなかった(賛否どちらも決定に必要な票数を得られなかった)。

 2750th AGRICULTURE AND FISHERIES Council meeting, Brussels 18 September 2006

 問題のナタネについては、欧州食品安全機関(EFSA)の安全性に問題はないという意見にもかかわらず、昨年12月5日の各国代表で構成される規制委員会会合で意見が分かれ、承認の可否を決定できなかった。このような場合には閣僚理事会の決定に委ねるという承認手続に従い、欧州委員会は今年7月11日に理事会に対して承認案を提出したが、ここでも同様に決定に至らなかったわけだ。

 地球の友(ヨーロッパ)は、日本では港周辺の野生地で輸入GMナタネが育ついくつかのケースが発見されており、荷揚げと輸送の間に種子がこぼれで発芽した疑いがある、オーストラリアの非GMナタネのGM品種による汚染事故もあったとして、加盟国が承認を拒否するように要請していた。

 EU Member States reject GM oilseed rape and support Hungary GM maize ban,06.9.18

 しかし、この要請は結局は通らなかった。理事会が決定できなかった場合の手続に従い、欧州委員会が3ヵ月以内に承認を決定することになろう。

 この会合では、98年に承認されたモンサントの害虫抵抗性GMトウモロコシ・MON610に関する加盟国独自の禁止措置も別に論議された。ハンガリーは05年1月、このトウモロコシの安全性への懸念からその利用・販売・生産・輸入を禁止した。しかし、欧州委員会はこの禁止の解除案を来るべき理事会に諮ろうとしている。ハンガリー、オーストリア、スロバキアはこの委員会提案に反対の立場を表明、ポーランド、チェコ、スロベニア、フランス、イタリアもこれを支持したという。

 なお、1999年6月以来のGMO新規承認の事実上のモラトリアムの解除以来、新たな承認手続を定めるGMOの故意の環境放出に関する新指令(Directive 2001/18/EC)に従ってEUが承認した新たなGMO製品は下表の5つとなる。これらのすべてが加盟国による承認に至らず、委員会決定で承認されたものである。  

製品

承認用途

承認日付

除草剤グリホサート耐性ラウンドアップ・レディートウモロコシ(モンサント)・NK603

輸入と飼料及び工業用加工への利用、栽培は未承認

04年7月19日

害虫抵抗性トウモロコシ・MON 863(モンサント) 輸入と穀粒・穀粒製品の利用、栽培は未承認

04年7月19日

除草剤耐性採油用ナタネ・GT73(モンサント) 輸入と飼料及び工業用加工への利用、栽培は未承認

05年8月31日

除草剤耐性及び害虫抵抗性トウモロコシ・line 1507 - CRY1F(Pioneer/Mycogen Seeds) 輸入と加工用、栽培は未承認 05年11月3日
害虫抵抗性トウモロコシ・MON 863 X MON 810(モンサント) 輸入と穀粒・穀粒製品の利用、栽培は未承認 06年1月16日

 *バイエル社が承認を申請したいた除草剤・グリホサート・アンモニウム耐性品種・Ms8、Rf3、Ms8xRf3。