GMカノーラで肥満退治とオーストラリア専門家 影が薄れるばかりの根本への取り組み

農業情報研究所(WAPIC)

07.1.29

 西オーストラリア紙の報道によると、西オーストラリア州のトップ農業コンサルタントやバイテク専門家が、州を襲い始めた肥満の危機と闘うための手段として、遺伝子組み換え(GM)技術でトランス脂肪酸を排除するカノーラ(ナタネ)の導入を唱導しているそうである。

 GM canola could spell the end of trans fats,The West Auatralian,1.29
  http://www.thewest.com.au/default.aspx?MenuID=77&ContentID=8876

 農業コンサルタントは、州政府によるGM作物商業栽培の2008年までのモラトリアム(一時的禁止)は”ばかばかしい”、GMカノーラの栽培は西オーストラリア農民に1億7000万ドルの利益をもたらすと言う。マードック大学州農業バイテクセンターのマイク・ジョーンズ教授は、オーストラリアよりも”10年は進んでいる”カナダの品質・栄養改善にかかわるGM作物の開発・生産を称え、トランス脂肪酸の排除は肥満問題解決に非常に大きく貢献すると言う。

 中東訪問中の州農業大臣のコメントは得られないが、以前、GM技術は西オーストラリアの市場と州の食品安全性の受け止め方に深く、恐らくは回復不能な影響を与えるだろうと語っている。オーストラリアバイテク産業団体(AusBiotech)会長は、GM製品のあり得る健康便益が消費者のこの技術受け入れにつながることを期待すると言う。

  肥満問題の深刻化がトランス脂肪酸を減らすGMカノーラの導入を促す。花粉症問題の深刻化が花粉症緩和GM米の開発を促す。商業作物モノカルチャー・小農民駆逐が促す途上国の貧困と栄養不良が、栄養強化GM作物の開発を促す。人為的気候変動でますます深刻になる干ばつが、干ばつ耐性GM作物の開発を促す。狂牛病はプリオンを除去したクローン牛の開発までもたらしそうだ(世界の飼育牛すべてがプリオンを持たないクローン牛に?,07.1.15)。

 GM技術のお陰で、これらの問題とその深刻化をもたらした根本的原因の除去に向けた努力は影が薄れるばかりだ。遺伝子組み換え万歳!