GMナタネ種子が10年も生き残り バイオ燃料用非GM品種にも新たな食品安全問題

農業情報研究所(WAPIC)

08.4.2

  スウェーデン・ルンド大学のD'Hertefeldt率いる植物生態学者が、遺伝子組み換え(GM)ナタネの種子が栽培後10年も生き残り、発芽できることを発見した。

 こうなると、一度GM作物を栽培したことのある土地で栽培される非GM作物や有機作物が、表示基準や有機農業基準を満たせなくなる恐れある。

 このGM作物が食品として不適な、例えば薬剤生産用作物だとすると、これは食品安全問題にも直結する。

 ただし、ナタネの種子はGMナタネに限らず、非GMナタネでも恐ろしく長く生き残る。食用に不適なバイオ燃料原料用の非GMナタネの栽培でも、同様に食品安全問題が生じる。

 最新のネイチャー・ニュースが伝えている。

 Transgenic crops can persist for ten years,Nature News,4.1
 http://www.nature.com/news/2008/080401/full/news.2008.729.html

 これら植物生態学者たちは、スウェーデン南部のLönnstorp実験農場で生育しているのが見つかった苗の研究でこれを発見した。1995年、この農場の一画にはバイテク企業・Plant Genetic Systemsの除草剤耐性品種を含む様々なGMナタネ品種が蒔かれた。その後1996年以来、この一画は小麦、大麦、テンサイの栽培に使われてきた。

 彼らは2005年にこの一画から苗を採集したが、予期されなかった38のナタネが他の作物に混じって育っているのが見つかった。これら植物を除草剤で試験すると、15が除草剤耐性で、GMナタネが残した種に由来することが分かった。

 英国草地・環境研究所(IGER)のNorth Wyke試験場長・Les Firbankは、GMであろうと、非GMであろうと、ナタネが長く生き残ることは知られているが、この発見は”恐ろしく長く”生き残ることを確認した、そこから次のような問題が生じると言う。

 一つは、表示基準をどう守るかの問題である。たとえば、EUで「有機」と表示される食品はGM由来物質を0.9%以上含んではならないが、GM種子がこれほど長く生き残っていると、特に新たな作物がかつてのGM作物栽培地で栽培される場合には、この上限を守るのは難しくなるかもしれない。

 食品に入り込めば危険な薬剤を生産のためのGMナタネ品種も開発されつつあるから、「食品安全の問題」にもなる可能性がある。

 GMナタネに限らず、非GMナタネもこのように長く生き残るとすると、バイオ燃料原料として使われる食用作物としては不適な非GMナタネが食料用ナタネの中に入り込む恐れもある。「これは、種子が長く生き残るすべての作物―GM作物だけではない―にかかわる重大問題だ」と言う。

 D'Hertefeldtは、ドイツで試験されている高澱粉ポテトなどの種子生産を防止できる他のGM作物ならば、このような問題は生じないが、花を生産しないGMナタネなどは問題外、ナタネは油を採るために栽培し、油は種の中にあると言う。