フランス下院 GMOフリーゾーン設置も可能な法案採択 地域農業・生態系を守る

農業情報研究所(WAPIC)

08.4.3

  フランス国民議会(下院)が4月2日夜、EUが禁止する遺伝子組み換え体(GMO)フリーゾーンの設置も可能にする法案を採択した。社会党、共産党などの政府案 修正に山地地域選出議員など一部の与党議員も賛成、野党議員も”信じられない!”と叫ぶ大逆転採決となった。

 政府案は、GMOは「環境と公衆衛生を尊重して」栽培せねばならないとするだけだったが、ルモンド紙によると、採択された修正案は、GM植物は、事実上、「農業構造、地方生態系、”GMOフリー”と称される生産・商業部門」を尊重してのみ栽培できる ことを意味するものになったという。

 審議の途上、野党議員は、原産地呼称産品、品質保証ラベル産品、有機農業をGMO栽培による花粉汚染から守らねばならないと一貫して主張してきた。しかし、これは地域からGMOを完全に排除することを禁止するEUの規則に反する恐れがある。与党議員は、これを口実として 野党修正案に反対した。しかし、投票に当たり党議拘束はかけなかったことから、産地呼称や品質保証農業が経済的・文化的に大きな重みを持つ山地地域から選出された与党議員が野党案支持にまわり、大逆転になったという。

 L'Assemblée adopte un amendement qui encadre fortement l'utilisation des OGM,Le Monde,4.3
 http://www.lemonde.fr/sciences-et-environnement/article/2008/04/03/l-assemblee-adopte-un-amendement-qui-encadre-fortement-l-utilisation-des-ogm_1030330_3244.html#ens_id=1019229
 

 これによって、例えば 統制原産地呼称(AOC)や山地呼称などを持つ地域全体からGMOを締め出すような”GMOフリーゾーン”の設置の可能性も生まれる。法律成立までには上下両院で2回ずつ行われねばならない審議の最初の段階が終わったにすぎず、逆戻りの可能性はなお残る。しかし、 結局は当たり障りのないところに落ち着くであろうと見られていた審議の行方は、一転、混沌としてきた。