トルコがGM食品・飼料の輸入規制強化 米国飼料輸出に深刻な影響 トルコの畜産は?

農業情報研究所(WAPIC)

09.11.4

  トルコが10月26日、バイオセーフティー(生物多様性の保護)を目的に、遺伝子組み換え(GM)成分を含むあらゆる食品・飼料の輸入に新たな要件を課する新規則を公布した。アメリカ穀物協会(USGC)地域ディレクターによると、禁止はポテトチップから穀物、副産物まであらゆるものに及ぶ。トルコは米国のコーングルテン飼料(CGF)やエタノール蒸留粕(DDGS、バイオ燃料エタノール産業の重要収益源をなす副産物で、飼料として利用される)の最大の輸入国だから、米国粗粒穀物(トウモロコシ)とその生産者には重大な影響が及ぶという。

 USGC,Turkey Puts Kibosh on Biotech Imports
  http://www.grains.org/news-events/2005-turkey-puts-kibosh-on-biotech-imports

  USGCによると、トルコは2008年、43万5378トンのCGFを輸入、今年前半にも20万2422トンを輸入した。DDGSについても、2008年に46万5212トンを、今年1月から8月までに19万9173トンを輸入している。

 米国通商代表部(USTR)によると、米国GM作物の2007年のトルコへの総輸出額は10億ドルを超えるが、これに対する影響の度合いは新規則実施のあり方にかかっている。 


 バイオセーフティーが目的とはいえ、トルコの食品・飼料産業への影響も甚大であろう。特に重要な飼料成分の大部分を失う畜産業は成り立つのだろうか。

 トルコだけの問題ではない。スペイン、ドイツ、デンマークの港では、モンサント社の未承認GMトウモロコシの混入で、総計20万トンの米国大豆・大豆ミールの荷揚げがストップしていた。これではEUの畜産が成り立たなくなってしまう。

 それでも10月20日の農相理事会は、これらGMトウモロコシを承認するとも、拒否するとも決定できなかった。これを受けた欧州委独断の承認(EU規則では、閣僚理事会の票が割れて承認の可否を決定できなかった場合、欧州委が可否を決定することになっている)で一件落着となったが、同様の問題は、今後も続々現れるだろう。

 飢餓常襲国のエチオピアでは、やはりバイオセーフティー(生物多様性保護)の目的で、GMO輸入を阻止する法案の準備が進んでいる。これは、食料援助受入れのストップにつながると懸念されている。

 Ethiopia Biodiversity Law Threatens Food Aid Shipments,VOA,11.2
 http://www.voanews.com/english/2009-11-02-voa47.cfm

 GM作物・食品は、世界の食料・環境問題を複雑化させるばかりではなかろうか。