米国GMコーン農業者 25%が害虫の抵抗性発達抑制ルールを守らず 有機・非GM農家も脅かす

農業情報研究所(WAPIC)

09.11.6

 害虫抵抗性(殺虫性)遺伝子組み換え(GM)コーン(トウモロコシ)を栽培する米国農業者の4人に1人が、害虫の抵抗性発達を抑えるためのルールを守っていない。

 情報公開法に基づき環境保護庁(EPA)から入手したデータによってこの事実を明るみに出した公益科学センター(CSPI)は、このままでは、Bt毒に抵抗性を持つ害虫がはびこり、GM作物のみならず、Btをベースとする天然殺虫剤を使っている有機農家や通常非GM農家の将来が脅かされると警告している。

  Too Many Farmers Growing Genetically Engineered Corn Not Complying with Key Environmental Requirements,Center for Science in the Public Interest,09.11.5
   http://www.cspinet.org/new/200911051.html

 2008年、米国のトウモロコシ作付面積の57%に、殺虫性土壌細菌Btから取り出した遺伝子を組み込まれた殺虫性GMトウモロコシが植えられた。これら作物には、コーンルートワーム(根きり虫)や葉・茎・茎内部を食害するコーンボーラー(アワノメイガ)を標的害虫とするものがある。

 このような作物を栽培するに際しては、害虫のBt毒への抵抗性発達を抑えるために、GM作物に隣接し、あるいはその近くに、サイズやGM作物からの距離(場所や標的害虫によって異なる)が指定された”避難地”(非GM作物を植えた害虫のBt毒からの避難地)を設けねばならないとされている。

 ところが、EPAのデータによると、コーンボーラー抵抗性GM作物を栽培する農業者でサイズ要件を満たしているのは78%、距離要件を満たしているのは88%だった。ルートワーム抵抗性GM作物を栽培する農業者では、これらの比率は74%、63%にすぎない。両方の害虫に抵抗性を持つGM作物の栽培者でも、それぞれ72%、66%にすぎなかった。

 しかも、ルールを守らない農業者は、ここ数年で急速に増えた。2003年から2005年までは90%以上がルールを守っていたことからすると、ルール遵守率は最近2〜3年の間に急速に低下したことになる。CSPIは、GMトウモロコシ栽培面積の驚異的拡大を考えると、これは許しがたい、「規制当局は、バイテク作物栽培者だけでなく、全農民を脅かす害虫問題を防ぐために、100%近い遵守率にこだわるべきだ」と言う。

 CSPIはリサ・ジャクソンEPA長官に対し、バイテク企業が高い遵守率を実証するまで、既存Btトウモロコシ品種の登録更新をすべきではない、登録を更新するのなら、遵守率が現状にとどまるかぎり、モンサント、パイオニア・ハイブレッド、シンジェンタ、ダウ・アグロサイエンスなどの登録企業は、重い罰金か種子販売制限に服するべきだという書簡を送ったという。

 なお、CSPIはGM作物に反対するのではなく、厳格な規制を求めてきた団体である。 


 バイオエタノール用需要も加わってのトウモロコシブームからすると、この稼ぎ時にこんなルールなど守っていられるか、というのが農業者の本音ではなかろうか。GM作物が急増していると喧伝される多くの途上国の小規模農民には避難地設定の余裕などなく、こんなルールはもともと守りようがない。 除草剤耐性GM作物の普及によって既に起きている除草剤が効かないスーパー雑草の発生といい、まさに、GM作物は、「バイテク作物栽培者だけでなく、全農民を脅かす」。