米国 GM作物商業栽培で農薬使用量が激増 除草剤耐性大豆農家の将来は経済的に真っ暗

農業情報研究所(WAPIC)

09.11.19

 米国オーガニックセンターの新たな研究報告が、米国における遺伝子組み換え(GM)作物の商業栽培が農薬使用を劇的に増加させていることを明らかにした。

 Impacts of Genetically Engineered Crops on Pesticide Use in the United States: The First Thirteen Years,Organic Center,November 2009
  http://www.organic-center.org/reportfiles/EXSUM_13Years20091116.pdf

 この研究は、米国農務省の公式データに基づき、米国で栽培されるGM作物の大部分を占めるトウモロコシ、大豆、棉の単位面積(1エーカー)あたり平均農薬施用量を、GM作物と非GM作物で比較した。

 商業栽培が始まってから13年(1996-2008年)の間に、GM作物農家は、非GM作物農家よりも3億8300万ポンド多い除草剤を使用した。ただし。殺虫剤使用量はGMトウモロコシ・棉農家の方が6400万ポンド少なかった。差し引きすると、この13年間の農薬使用量は、GM農家の方が3億1800万ポンド多かった。

 この違いは、GM農家の1エーカーあたり農薬施用量が約0.25ポンド増えることからくる。この施用量は加速的に増えてきた。2008年には、1エーカーあたりのGM作物に施用される農薬は、通常作物に比べ、28%も多かった。報告は、グリホサート(ラウンドアップ除草剤耐性GM作物栽培につきものの除草剤)耐性雑草の急速な拡散の結果として、この傾向が今後も続くと予測している。

 報告によると、このような傾向は、GM作物の将来に暗い影を落とす。ラウンドアップ(RR)作物に関しては、2009年が頂点を画することになるのではないかと言う。除草剤耐性大豆の作付面積は、前年に比べて1%減った。2010年にはもう少し減りそうだ。いくつかの州で通常大豆種子の需要が増えており、大学や地域の種子企業が共同、不足を埋めようとしている。

 GM大豆離れの理由は、グリホサート耐性雑草の防除のコストと難しさ、RR種子価格の急騰、非GM大豆に与えられるプレミアム価格、2009年のRR種子の収量の低さ(予想、または約束された収量に比べての)、そして通常種子を保存し・再植する(RR種子購入農家は、通常はこれを許されない)農家の能力にあるという。

 平均収量(エーカー36ブッシェル)、市場価格(ブッシェル6.50ドル)の下で除草剤耐性雑草と闘う農家の経済的生き残りは厳しい。この条件ではエーカーあたり粗収益は234ドルだが、2010年の種子コストは80ドルで粗収益の3分の1に達する見込みで、全運転費用は200ドルを超えそうだ。となると、残り34ドルで地代、労働、管理、負債、その他の固定費用をカバーせねばならない。農家にはほとんど利益が出ない。

 農薬費が節約できるなど多様な農家の利益を理由に高い種子コストを正当化してきたバイテク企業にも転機が訪れようとしているということだろうか。