中国がGMライス承認?一体何のために?それとも開発研究者の単なる期待?

農業情報研究所(WAPIC)

09.11.28

  ロイター通信が、中国農業部生物安全委員会が害虫抵抗性の遺伝子組み換え(GM)Btライスを承認したと伝えている。委員会のメンバーである二人の科学者が27日、ロイターに対してこの事実を明らかにし、2-3年のうちに大規模栽培が始まるだろうと話したという。

  Exclusive: Top rice producer China approves GMO strain,Ruters,11.27
 http://www.reuters.com/article/ousiv/idUSTRE5AQ2ZD20091127

 ただし、科学者は政府が公式に情報を出したと確認するのは拒んだ。また、農業部生物安全オフィスの官僚もコメントを拒んだという。グリーンピースは、我々の情報ではそのとおり、委員会の会合は2種のGMライスとコーンを承認したと語る (農業部のウエブサイトで発表。ただし、健康・環境影響に関する情報は何一つ開示されておらず、最終決定にかかわった委員の名前も明らかにされていないという*)。国際稲研究者のジーグラー所長は、中国がGMライスを承認すれば、他の国の承認も楽になると期待する。

 *Update: Urgent statement on China GE rice,Greepecace China,11.27
  http://www.greenpeace.org/china/en/press/release/china-GE-rice-statement

 実のところ、2005年9月にも、China Daily紙(05.9.19)を通じて、11月の委員会会合でGMライスが承認されるだろうといううわさが流された。しかし、11月の会合は、安全性の立証にはなおデータが不足している、十分な安全性情報が提供されれば来年、再度評価すると決定を先送りしてしまった。その後、承認に関する話はすっかり立ち消えとなった(北林寿信 「遺伝子組み換え作物の将来 その5 中国は遺伝子組み換え稲を承認するのか」 農林経済(時事通信社) 06年12月4日)。早期承認を求める開発研究者やGM唱道者が、政府に圧力をかけるために流したうわさだったのではないかと疑われる。

 今回もそうと言える証拠はない。ただ、今GMライスを承認する利益がどこにあるのだろうか。中国人の米消費は、日本、韓国と同様に減り続けている。将来の米不足にも、現在の高収量ハイブリッドライスで十分対応できるはずだ。今GMライスを承認すれば、国内外の消費者の不安や反発を強めるだけだ。

 むしろ、GMライス導入による生物多様性喪失が将来の食料安全保障を脅かす。今月発表された生物多様性に関する中国の研究は、中国における米品種の数が劇的に減少しており、これが国の食料安全保障と生物多様性に関する恐怖を呼び起こすと述べている。1950年代に46,000もあった米品種は、2006年には1000にまで減った。GMライス導入は、この傾向を加速するだけだろう。

 Fall in rice strains highlights China's biodiversity gap,SciDev,11.26
 http://www.scidev.net/en/news/fall-in-rice-strains-highlights-china-s-biodiversity-gap.html