タンザニア 酸性土壌アルミニウム耐性ソルガム遺伝子の特許で米国とブラジルを告発へ

農業情報研究所(WAPIC)

10.2.15

  タンザニア政府が、タンザニアの農場から分離されたアルミニウム耐性ソルガム遺伝子の特許権をめぐり、「植物遺伝資源に関する国際条約」を盾に米国政府、ブラジル政府、二つの多国籍企業ーダウ・ケミカルと日本の王子製紙ーに法的闘いを挑もうとしている。この遺伝子は、米国農務長官が代表する米国に譲渡された。米国農務省(USDA)農業研究局(ARS)は2008年11月、ARSとブラジル農業研究公社(EMBRAPA)の研究者が「酸性土壌中のアルミニウムからソルガムを保護する遺伝子を確認した、世界中で見られる酸性土壌はソルガムのような食料植物に有毒なレベルのアルミニウムを含み、この発見はこの作物に頼る生業的農家が育てることのできるソルガム品種の開発を助ける」と発表している。

 Secrets to Sorghum Survival in Acidic Soils,USDA:ARS,08.11,21
 http://www.ars.usda.gov/is/pr/2008/081121.htm

 ところが、2009年9月、ARSの研究者がブラジルの研究者と一緒に、米国特許局に対し、この遺伝子に対する特許を申請した。ダウ・ケミカルと王子製紙は、この特許のライセンス契約に関心を示しているという。狙いは、この遺伝子を使って酸性土壌の土地で育つ米などその他の重要作物のアルミニウム耐性品種を育成、その利益を独占することにある(バイオピラシー)。これを伝える”The EastAfrican ”の調査によると、両国政府は、アフリカを含む世界中でも通用する国際特許を求めている。ダウ・ケミカルと王子製紙は、タンザニアでのユーカリ・プランテーションに1億1000万ドルを投資する。

 タンザニア政府は、この作物特許は、国の食料安全保障にとって致命的で、国際条約に違反すると言う。また、貧困ライン以下で暮らす数百万のタンザニア人が日々の食物の調達で苦闘しているときに、多国籍企業が高価なソルガムの種を売りつけることで巨利を得るために特許を求めているのであって、これは国の食料価格を吊り上げることになるだろうと言う。

 南アフリカのアフリカ・バイオセーフティ・センターのMariam Mayet所長は、植物遺伝資源に関する国際条約の実施を監督するタンザニア当局に書簡を送り、特許申請に挑戦するように要請した。また、特許申請に挑戦する政治的・法的戦線を形成する国連食糧農業機関(FAO)の条約担当部門にも書簡を送った。

 彼女によると、ソルガムは何百万もの貧しい人々が生残の頼りとする基礎食料の忍び寄る商品化から保護されるべきアフリカの伝来作物だ。この作物はFAOの植物遺伝資源に関する国際条約のアネックス1に含まれており、過去数十年をかけて収集されたタンザニア農民の品種は、この条約の下、インドの半乾燥地域国際作物研究所に委託保管されている。条約は委託保管されている植物品種・遺伝子に対する特許申請を禁止している。

 US, Brazil seek patent to Tanzania sorghum,The East African,10.2.15
 http://www.theeastafrican.co.ke/news/-/2558/861208/-/pv8ocdz/-/index.html