農業情報研究所農業バイテク>ニュース;2010年9月30日

米国コーンベルトの水路 収穫6ヵ月後にもGMトウモロコシの殺虫蛋白質が散乱

 米国ノートルダム大学の生態学者・Jennifer Tankが率いる研究チームが、米国の中西部・コーンベルト全域の水路(stream)が、収穫後6ヵ月を経たのちにも、殺虫性遺伝子組み換え(GM)トウモロコシ(Btトウモロコシ)に由来する遺伝子組み換え物質で汚染されていることを明らかにした。

 全米科学アカデミーのProceedings(PNAS)誌で2007年に発表されたチームのペーパーは、トウモロコシの花粉、葉、穂軸に含まれる組み換え物質が中西部の水路に流入しており、これが下流の河川(水域)に運ばれる可能性があることを示していた。9月27日に同じPNAS誌に発表された研究は、収穫6ヵ月後のインディアナ北西部の217の水路のサーベイにより、これら物質とそれに結合した殺虫蛋白質・Cry1Abの行先と存在を調査したものである。

 この調査で、農業用水路ではほとんどどこでもトウモロコシ副産物(作物残滓)が見られ、調査したサイトの86%で、流れの中にトウモロコシの葉、穂軸、皮や茎が含まれていることが分かった。さらに、BtトウモロコシからのCry1Ab 蛋白質の量を測る高感度の検査で、13%のサイトで収集されたトウモロコシからCry1Abが検出された。また、23%のサイトで、水に溶け込んだCry1Abが検出された。

 中西部コーンベルトの大部分の水路がトウモロコシ畑に近接している。地理情報システム(GIS)分析で、20万qに達するインディアナ、アイオワ、イリノイの水路や河川の91%がトウモロコシ畑から500m以内に位置していることが分かった。これは、トウモロコシ副産物とそれに結合した殺虫蛋白質がコーンベルト諸州全体の水路に流れ込んでいる可能性を示唆する。

 研究者は、我々の研究は、コーンベルトの水路には収穫後長期にわたって作物残滓とそれに結合した組み換え物質が存在し、散乱していることを示した、これは自然生態系に影響を及ぼす恐れがあると強調している。
 
  Jennifer L. Tank et al.,Occurrence of maize detritus and a transgenic insecticidal protein (Cry1Ab) within the stream network of an agricultural landscape,PNAS,Early Edition,September 27, 2010
  Abstract:http://www.pnas.org/content/early/2010/09/22/1006925107.abstract

 Bt作物は殺虫剤使用を減らすから環境に優しいとされてきた。しかし、殺虫蛋白質が環境にばらまかれているのでは、この主張も怪しくなる。