農業情報研究所農業バイテクニュース:2013年12月28日

中国 未承認GMトウモロコシ汚染で米国産エタノール蒸留かすの通関拒否

 中国が農業部未承認の遺伝子組み換え(GM)品に汚染された米国産エタノール製造副産物=家畜飼料として使われるトウモロコシ蒸留かす (DDGs)の二つのバッチの受け入れを拒否したということだ。上海で12月23日、総計758トンのDDGs船荷に未承認の害虫抵抗性GMトウモロコシ・MIR162(シンジェンタ社)が含まれるのが分かったという。

 China rejects U.S. GM corn byproduct,Xinhua,13.12.27

 中国はつい先日も、やはりMIR162が含まれていたとして54万5000トンのトウモロコシ船荷を送り返している。

 China rejects U.S. GM corn shipment,xinhua,13.12.20

 最近の一連のGMトウモロコシの受け入れ拒否について、ウォール・ストリート・ジャーナルは、「中国国内の収穫は好調で、米国産トウモロコシを送り返せるだけの余地がある」などと報じている。

 中国、米国産トウモロコシの輸入拒否が過去最大に ウォール・ストリート・ジャーナル 13.12.21

 しかし、これは中国の最近の穀物事情を見誤らせる言い方だ。最近のチャイナ・デーリー紙の報道によれば、中国の穀物生産は増えているにしても、都市化による耕地減少と近年の悪天候、肥料や農薬の過剰使用の問題に直面しており、消費の増大と食物の多様化に追い付くことができなくなっている。穀物の大ユーザーは近代化された食料供給チェーンと家畜であり、需給均衡のために昨年は1398万トンの穀物を輸入、大豆は2010年の5250万トンを大きく超える5450万トンを輸入した。そして、不作のときの国際穀物投機のリスクを防ぐために、中国政府は今週、穀物―トウモロコシ、米、小麦―の自給率を95%に維持する新たな目標を設定した。この目標達成のために、収量が低い土地の生産能力の改善、穀物輸入構造の最適化、肥料使用の削減、工業用穀物の削減が来年の政府優先事項に据えられたという。

 95% self-sufficiency urged for grains,Xinhua,13.12.26

 そんな中、折角輸入契約をしたトウモロコシを「送り返せるだけの余地」があるわけではない。まして、トウモロコシエタノールの副産物であるDDGsにGM品が含まれるのは不可避であり、それまで輸入できないとなれば、需要が増え続ける食肉・卵・乳の生産に重大な支障を来すだろう。こんな送還ゲームをいつまでも続けることはできない。実際、ウォール・ストリート・ジャーナルも言うように、「中国農業省はMIR162系統を引き続き審査中」であり、頃合いを見て、いずれMIR162の承認に踏み切るだろう。断固輸入を拒否する中国はとっくの昔に承認している日本に比べて立派といった見方もどこかにあるようだが、それは見当ちがいの話である。