農業情報研究所農業バイテクニュース:2014年3月15日

FAO GM作物普及が重大な農産物貿易攪乱要因に 問題解決のための国際会議開催へ

 FAOの最新の調査によると、遺伝子組み換え(GM)作物の世界的普及が、問題への国際的取組を要するほどに重大な世界農産物貿易攪乱要因になってきたということである。

 GM作物の普及ともに、輸入される食料・飼料に低レベルの遺伝子組み換え体(GMO)が発見される事例が増加している。これはGM作物が生産・加工・包装・貯蔵・輸送の過程で偶然に非GM作物に混入する場合が増えているからある。この調査ではFAO193ヵ国中の75ヵ国が質問の答えたが、輸入品に低レベルのGMOが混入した事故は2002年から2012年までに198件を数える。うち、138件は2009年から2012までの間に起きたもので、近年になって急増していることが分かる。こういうGMO混入食料・飼料の主な輸出国は米国・カナダ・中国だが、これらの国に限られるわけではない。事故の頻度はアマ種子、米、トウモロコシ、パパイヤでい。

 貿易攪乱は”低レベル”の定義に関する国際的合議がないことからくる。受入れ可能なレベルをケース・バイ・ケースで決めている国もあるが、多くの国は検出可能なレベル(検出限界値)と解釈している。輸出国で販売が許可されていても輸入国では許可されていないGMOが少しでも見つかれば、大部分の場合、輸入国は廃棄するか、輸出国に返送している。調査によれば、26国が微量のGMO発見で輸入を止めた。

 FAOによれば、こうして貿易の流れから排除される穀物等の量は貿易量全体に比べれば僅かであるとはいえ、そのコストは大きく、しかもそういうケースが増えているのは問題だ。こういうわけで、3月20−21日、ローマでテクニカル・コンサルテ―ションを開催、この問題に関する各国間の対話をスタートさせる。会合では、専ら”低レベル”のGMOに関連する貿易問題を議論、GM作物の是非については議論しないという。

  とはいえ、この問題にどんな解決法があるのだろうか。貿易措置の発動が許されない”低レベル”の統一的定義などとてもできそうにない。

 調査によれば、そもそも回答した75ヵ国中37ヵ国はGMO検出能力―試験所、技術者、設備―を持たず、多くの国がGM作物が食べて安全かどうかのアセスに対する支援を求めている。FAOは、各国が安全性評価に関する情報を共有するためのウエブページ=FAO GM Foods Platform http://fao.org/gm-platform/)を立ち上げたそうだが、それで統一基準ができるとも思えない。会合が、未承認GMOが少しばかり発見されたからといって廃棄や返送するのはやめるべきだと政治的圧力をかける場にならない保証はない。そうなると、BSE問題で食品安全よりも貿易を優先したOIE(国際獣疫事務局)の二の舞になる恐れがある。

 Press Release:Steady increase in incidents of low levels of GM crops in traded food and feed,FAO,14.3.13
  Report:
Survey on low levels of genetically modified crops in international food and feed trade