農業情報研究所農業バイテクニュース:2014年8月21日

米国とブラジル GMユーカリの承認が近い 破滅的環境・社会影響の恐れ

 インター・プレス・サービス(IPS)が報じるところによると、米国、ブラジルの両政府による遺伝子組み換え(GM)ユーカリの承認手続きが最終段階にある。ブラジル政府は9月第一週にも承認案のパクリックコメントをスタートさせる。米国規制当局は昨年早くから環境影響評価を進めており、評価案は出るのもそう遠くないという。

 U.S., Brazil Nearing Approval of Genetically Engineered Trees,IPS,14.8.21

 GM食品についてはわが国でも議論は多いが、GM樹木に関する議論はあまり聞かない。しかし、GMユーカリとなると、その環境・社会的影響はGM食品と比べものにならないほど大きく、深刻なものとなる恐れがある。

 ユーカリは紙・パルプ原料として、また最近はバイオ燃料原料としても引っ張りだこだ。世界でユーカリ・プランテーションが増えており、オイルパームにも似てもともとの森林を蚕食しつつある(注1)。GMユーもリは成長が早いから、実用化されれば経済性は大きく成長、米国、ブラジルだけでなく世界中の森林のモノカルチャー・プランテーション化が一気に加速するに違いない。GMユーカリは寒冷耐性を強められるから、その栽培地も北に向かって大きく広がる。

 世界の森林破壊が加速するだけではない。多くの森林先住民は食料その他の生活の糧を依存する土地を奪われる。ユーカリは大量の水を消費すことでも知られている。彼らのみならず、森林の外の多くの人々が依存する水源も枯れるだろう(注2)

 紙とエネルギーの消費を減らすこと、破滅的影響を避ける手立てはそれしかないのだろうか。しかし、米国やブラジルの当局には、そんな考えは毛頭ない。企業の儲けを増やすことだけが承認の目的なのだろう。

 (注1)その1例⇒When Forests Aren't Really Forests: The High Cost of Chile's Tree Plantaions,Environmental News Network,2014.8.19
          http://www.enn.com/ecosystems/article/47725

 (注2)例えば、「水を吸い上げる木をナイルの周りに植えれば、水は決してエジプトに届かないだろう」と言われる。
    Ugandans Invest in Trees, For Profit, Conservation,Voice of America,2012.2.2
         http://www.voanews.com/content/ugandans-invest-in-trees-for-profit-conservation-138642549/159550.html