農業情報研究所農業バイテクニュース:2015424日;4月25日追記

欧州委員会、GM食品規則修正を提案 EUレベルで承認のGMOも各国が制限・禁止できる

 欧州委員会が422日、EUレベルで承認された遺伝子組み換え体(GMOs)の食品または飼料への使用を国レベルで制限または禁止する自由をEU各国に与えるようにGMO規則を修正することを提案した。EUレベルで承認されたGMOの栽培を各国が制限または禁止することを許す規則修正についてはすでに今年3月、閣僚理事会と欧州議会が合意している (Directive 2015/412/EU).。今回の提案は、これを食品や飼料としてのGMO利用にまで拡大しようというものだ。

 この修正により、EU各国は、EUの科学的リスク評価が栽培しても消費しても安全としたGMOであっても、社会・経済的理由で、あるいは土地利用政策を根拠に栽培・使用を制限したり、禁止することができるようになる。欧州委員会は、これは「多くの欧州市民」や各国政府の声に耳を傾けた結果だと言う。

 More freedom for Member States to decide on the GMOs use for food & feed,European Commission,15.4.22

 とはいえ、EUの単一リスク管理システムは維持される。「科学」に基づく現在の許可システム*と消費者の選択を確保する表示ルールはそのまま残る。各国は、制限または禁止がEUレベルで評価される人と動物の健康または環境上のリスクとは別の理由で正当化され、域内市場の原則やWTOが課すEUの国際的義務に反しないことを示さねばならない。

  *GMOs: decision-making process explained (infographic)

 したがって、環境グループからはなお不満の声が上がる。グリーンピースEUによれば、多数派政府や欧州議会が反対する場合でも、欧州委員会はGM種子の輸入を許可することができ、バイテク企業や域内のGMO推進国(イギリス、スペイン、オランダなど)が各国の制限・禁止を域内市場の原則に反すると裁判に訴えるときには、この制限・禁止の権利は必ずしも保証されない。フィナンシャル・タイムズ紙も、「これはEU司法裁判所での法的挑戦に生き残ることはできないだろう。単一市場のルールに反するからだ」と言う。

 Juncker breaks promise to make EU GMO decisions more democratic,GreenpeaceEU,15.4.22

 The EU makes a mess of bioengineered food(Editorial),FT.com,15.4.23;Financial Times,15.4.24,p.8

 さらに、新たな規則は米国からの激しい攻撃にもさらされる。それは難航しているEU‐米国貿易投資協定(TTIP)交渉を一層複雑にする。フロマン米国通商代表も早速、この提案には「失望した」、それは「EU28の分離された市場に分割する恐れがあり」、EU‐米国貿易協定を危険にさらすと声を上げた。「米国とEUが成長と雇用のさらなる機会を創出しようと努力しているまさにそのとき・・・この種の貿易制限的行動を提案するのは建設的ではない」と言う。

 USTR Expresses Concern over EU Proposal to Allow Member States to Ban the Use of GE Food and Feed Deemed Safe by EU,USTR,15.4.22

 先のフィナンシャル・タイムズ紙社説は、「TTIP交渉が突然止まるとすれば、その責はEUのみが負う」と言う。しかし、EU指導者は米国、TTIPではなく、何よりも「多くの欧州市民」に責を負わねばならない。どこかの国の指導者とは違う。規則をどうやって域内・域外(WTO)の法的挑戦に耐え得るものに仕上げるのか、それが問題だ。

 追記:425

 欧州委員会は424日、早速17GMOの輸入・食品と飼料への利用を承認した。2013年以来初めての新たなGMO承認である。上記の提案でフランス、オーストリア等GMO導入に慎重な国の反発がやわらぐと踏んだのだろう。しかし、これでは閣僚理事会(各国担当閣僚で構成されるEUの決定機関)や欧州議会による新たな規則(国の「法律」に相当)案の承認が難航することになるかもしれない。

 Commission authorises 17 GMOs for food/feed uses and 2 GM carnations,European Commission,15.4.24

 L'Union européenne autorise l'importation et la commercialisation de 17 OGM,Le Monde,15.4.24